FATALE (ページ2)

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第2話ページ2

こんな珍しいモノが何故自分の服に付いていたのだろう？しかし、いくら考えてもやはり何も浮かばない。

記憶を取り戻すのに役立つかもしれないと思い、他の道具と仕舞うことにした。そのまま仕舞うのは気が引けたので、白いハンカチで丁寧に包んだ。

なんとか、元の形で道具を戻す。記憶を失う前の自分は随分と器用だったようだ。

これといって成果は得られなかった。故郷も、家族も、友達の顔も、いやそもそも居たのかすらもわからない。

「これから、どうすれば？」

しばらく長い間その場に留まっていた。何かしようと思っても手をつけられない。不慣れな体に苛立ちを抱くが、それすらも自分が演じているのだと思うと反吐が出る。

突然どうしようも無く空っぽになってしまった自分。怖い。恐ろしい。独りぼっちだ。もし、ずっとこのままだったら？誰の温もりも得られないまま、死ぬのだろうか？

＿＿＿いや、もしかしたら死ねないのかもしれない。嫌だ。嫌だ。嫌だ。そんなの、嫌だ。それでは生きてるなんて言えない。拒絶だけが、彼が生きてると実感出来る言葉だった。

この状況を否定しろ。今の自分を否定しろ。彼は自分の嘘を信じることにした。今の自分は夢の幻に過ぎないのだと。夢から覚めればいつもの自分がいて、記憶も全て戻っていると。これは夢だ。悪い夢なんだ。

「君、だれ？」

頭上から声が聞こえた。ついに幻聴まで聞こえ始めたかと思ったが、違うらしい。座り込んでいた彼の前に立っていたのは、自分に似ている、大きな筆を持ったスケルトンだった。彼は不思議そうにこちらを見つめる。

「ここに入れる人、限られてるはずなんだけどな。どうやって入ったの？」

彼はそのスケルトンの質問に答えられなかった。そんなのこっちが知りたいくらいだ。だが、ようやく誰かと出会えたことで安堵する。彼は目の前のスケルトンに、分かっていることだけを説明する。

「僕はSans。気付いたらここに居た。なぁ、ここは何処なんだ？」

彼の質問に答える前に、スケルトンは自己紹介をする。彼が名乗った名は"Ink"。そしてこの場所はDoodle sphere(落書きの間)。ここを拠点に様々なAU世界の守護者として活動しているらしい。

「AU世界？なんだ、それ？」

意味のわからない言葉だけが並べられ、困惑する。Inkは順を追って説明することにした。AU世界、つまりAlternate-Universeは、オリジナルの世界から派生させられた様々な時間軸の世界のことを意味するらしい。