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第21話 ページ21

病室の窓を開ける。


入ってくるのは少し肌寒い風。


けれど、換気しないと彼女も


息苦しくて堪らないだろう。


ベットで横たわる彼女の目は固く閉じられている。


半年たっても彼女は未だに目を覚まさない。


「いい加減、起きてくれよ。」


彼女から返答はない。思わず涙があふれた。


こんなはずじゃなかった。だってこの先もずっと


お前は隣に居るものだと思ってたから。


「頼むから。」


目を開けてくれ、声を聞かせてくれ。


お前の笑顔が見たいんだよ。


隣で笑うお前が、ずっと、ずっと前から。


「好きなんだよ……。」


心の底から信じることが出来ないなら


それまでいつまでだって待つし


俺は絶対、裏切ったりなんかしない。


だから、だから、頼むから。


ああ、くそ……それしか思いつかないのかよ、俺は。


「お前に、会いたいよ……。A。」


病室の外で佇む男が一人、彼の独り言を聞いていた。


「何やってんだよ、姉ちゃん。
はやく、帰ってこいっつーの。」


静かに涙を零したのだった。





あれ?君もこの記録を見ていたの?


これは記録だよ。あっちの世界のね。


ハッキングすれば、ある程度状況が


わかるだけのものだけどね。


こちらの世界とあちらの世界じゃ


時間の動き方が違うから、これは結構前のもの。


今頃、**の体はどうなってるんだろうね?


まあ、それはどうでもいいんだよ。


だってもう、あの体の中は空っぽだから。


彼女が本気で戻りたいって思わない限り


目覚めることなんてない。


もう少しはやく彼女に想いを伝えていれば


変わったのかもしれないね。


いや、裏切られる方が怖いと思って


逃げることもあるかな?


君だったらどうする?A。


え?私?……そうだな。


……申し訳ないけど、答えが出ないや。


そもそも、だ。私はこれを見てるから


答えられないという結論に至る。


けど彼女は、**は大事な友達の


彼の言葉を聞けないから、この世界を選んだ。


知っていたら変わったかだって?……どうだろうね。


たった一人の為に戻るのもちょっとな。


ん?まるで彼女の気持ちを


わかってるみたいに言うねって?


うーん、まあ似たもの同士だからね。**とは。


ま、この記録は夢とでも思っていてよ。


そうじゃないと、


"痛くて泣いちゃいそう"、だよね……。


じゃ、物語の続きでも見ようか。

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作者名:あゆさ | 作成日時:2020年12月2日 20時

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