葛藤(山崎すすむ) 4 ページ8
山崎さんは私を抱え、飛び降りるとあの河原まで連れていった。本当なら店に戻らないといけないのだろうけど、私が気になるのだろう、傍にいてくれた。
喧騒から離れ、冷静になると、自分が恥ずかしくなってくる。
別に彼は私に特別期待を持たせるようなことはしていない。彼は彼の勤めを果たしていただけ。勝手に仲良くなったと勘違いしておいて、利用したと怒るのはお門違いというものではないか...。
「山崎さん、さっきは失礼なことを言ってしまってすみません。山崎さんはお役目を果たしていらしただけなのに...。私はもう大丈夫です。店に戻っていただいても構いません。」
彼が驚いたように目を見張る。
さらさらと川の水が流れていく。とどまることを知らず...。いくら嘆いたって動き出した現実も水同様私を待ってはくれない。
「私は明日から新しい奉公先を探します。もう、これでお別れですね...。」
...さようなら、山崎さん...
そう言われた時、心臓が潰されるような感覚に襲われた。彼女が消えてしまう...なぜかそう思い、必死になって彼女を抱き寄せていた。
「君を利用していたのは事実だ。もう何を言っても手遅れかもしれないが、君と過ごす時間は心地よかった。隊務だということを忘れてしまうくらい...。」
俺は何を言っているのだ...？自分でも分からない。それでも動き出したものは止められない。
「君を愛してる。」
言わずにはいられなかった。
静寂が重たい。今更何を言うのだと思われたに違いない。
「信じさせてください。」
そう言われたときは、自分の耳を疑った。
「本当にそう思っていらっしゃるのなら、信じさせて...」
...必ず。彼女の体温を腕の中に感じながら、そう誓った。
数日後。副長の紹介で新しい奉公先を見つけた彼女の元に出かける。早くもそこの看板娘となって、男にも人気のあるAが、俺だけに見せてくれる笑顔。優越感を感じない訳がない。
「もう少ししたらあがりますから、待っていてくださいね！」
と言ってパタパタと走っていく。
今日は約束していた紅葉を見に行くのだ。君とみる紅葉は綺麗に違いない...。
※山崎さんの｢すすむ｣の漢字がでなかったため、平仮名表記にさせていただきました。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雛月のえる(プロフ) - 可愛い恋だね！リリーラテさん文才ありすぎです！神以上です！ (2015年3月1日 22時) (
レス) id: fc66cd23d2 (このIDを非表示/違反報告)
雛月のえる(プロフ) - リリーラテさん» わかりました!楽しみに待ってます!リク、今回も受けていただき誠に感謝します! (2015年2月26日 23時) (レス) id: b493613181 (このIDを非表示/違反報告)
リリーラテ(プロフ) - 雛月のえるさん» ありがとうございます！土方さんの現代で書きたい題材があるのでそれを書かせていただきますね！m(_ _)m (2015年2月26日 23時) (レス) id: 08492bea53 (このIDを非表示/違反報告)
雛月のえる(プロフ) - あの、久々にリク良いですか?土方さんか薫 書きやすい方で良いのでお願いしても良いでしょうか?もちろん、貴女の都合もあるので、ゆっくりで良いですから! (2015年2月26日 20時) (レス) id: b493613181 (このIDを非表示/違反報告)
月華 - 楽しみに待ってます!! (2015年2月23日 16時) (レス) id: a4dc49a7cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リリーラテ | 作成日時：2015年1月17日 21時
