怪物、内緒のおでかけ�� ページ36
.
＊
「おー、音楽イベント以外で代々木来たの初めてだわ」
「へーそうなん」
「俺アメリカンドッグ食べたい」
「うん。あるよきっと」
その声は、樹音の耳に心なしか不服そうに聞こえてしまった。
代々木国立第一体育館の外周を歩く自分の隣には、フードを被ったA。……さらにその隣に、緑の毛先を耳にかけて上手くキャップに仕舞い込んだ真人が意気揚々と歩いている。
「バスケの試合久々〜、参加型のイベントとかないの？」
「今日は無いと思うで。あ、でもピカチュウ来る」
「まじ？」
「うん」
数日前のあの会話の後、早速試合のチケットを取るAの近くをタイミング良く通りかかった真人。
「バスケなら俺も一緒に行きたい！」と少々強引に名乗りを上げた彼の思惑は、実際のところなんなのか。それは本人にしか知り得ないものであるが、兎にも角にも目をキラキラさせて今日のデートに着いて来た形である。
爽やかマナトくんを隣に歩かせて、やはりAは少々複雑な顔を隠しきれない。
(折角の のんちゃんとのおでかけ……)
Aが何故そんな顔をしているのかわからない樹音は、「会場入る前にここのレイド行きたい」「ほなついでにやりたいイベントある」と会話する2人を見て思うのだ。
(てかよく考えたらマナトが適任じゃん)
元々バスケが好きで、Aの趣味に合わせてゲームもやっている。彼女に対する扱いは丁寧だし、面白い。
自分よりも随分、デートの相手に向いていそうだ。
真人自身もAに誘われるのは満更でもないのだろう。
その証拠に、高確率で『門限だ』なんだと断りがちな真人が、Aが声をかけたときにはそういう事を言った試しがない。
なのにどうしてわざわざミヅキは、
「のんちゃんっ」
「……」
「こっからちょっと行ったところ、寄っていー？」
「なにがあんの」
「「ボルトロスのたまご」」
「俺の知らないやつ来た」
声を合わせる2人に、樹音は口元を引き攣らせる。
Aは樹音にチラチラと振り向き視線を投げて、常に存在を気にかけているようだ。
その視線に気付いて、樹音は緩く口角を上げながら首を傾げて見せる。すると彼女は、ふふっと笑って前に向き直った。
自分に歩幅を合わせて付いてくる様子に、満足したかのよう。
(変なやつ)
優しくできるわけじゃない自分に、気まぐれに懐いてくるミヅキ。
どうして俺なの？と聞いてもきっと明確な答えが返ってくるわけじゃない。
それだけは樹音にも何となく分かっている。
そもそも、俺たちの距離感に 理由を言葉にするのは野暮な気もしていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 290人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くぼりや最推し(プロフ) - しんどい日にシュントにくっつき虫になるモンちゃんさいっっきょうに可愛いなぁ、、 (2月4日 21時) (
レス) @page26 id: 52130a7682 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - 塩さん» はじめまして。コメントありがとうございます！ついにモンちゃん２０歳を迎えてしまいましたなぁ…もしもし亀よの亀さんがのそのそ近付いてくる音が聞こえております😳笑 こちらこそ過去作にまで遡って読んでいただきありがとうございます！ (1月17日 23時) (レス) id: 8e0e8905f4 (このIDを非表示/違反報告)
塩 - 初めてコメントさせていただきます✨ モンちゃんが成人を迎えたタイミングで、「ジュノモンはモンちゃんがお酒飲めるようになってからが本領発揮」という言葉を思い出しこの話に戻ってきました…笑 とっても楽しみです！いつも更新ありがとうございます💖 (1月17日 20時) (レス) @page40 id: 99215fcdd5 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» もちろんこの後明かす予定ですよ〜！お楽しみにーっ！ (6月21日 19時) (レス) @page50 id: d5b75dcb66 (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - モンバの大阪城ホール２日目が、誰だったのか気になる〜！参戦したので😁超個人的で、すみません😅 (6月20日 22時) (レス) @page46 id: be11c96dd8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白 | 作成日時：2023年3月27日 22時
