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快晴の空に浮かぶ太陽は刺すような痛みを与え、茹だるような暑さを纏い温い風が吹く。拭っても拭っても流れ落ちる汗。日焼け止めももう意味がない。……こんなことなら日傘を持ってくればよかった。仄香は後悔をした。

高校二年の夏休み前半、仄香は親友のあの子とともに東京へ来ていた。あの子曰く、東京でしか食べられない夏限定スイーツがあるのだとか。東京に一人で行くのは怖いから一緒についてきて、そう頼まれたのだ。気持ちは確かに分かる。なにせあの大都会東京だ。田舎の娘がたった一人で行くにはあまりにもハードルが高い。
スイーツに興味があったし、何よりもあの子の頼みだ。断る理由がない。

結果を言えば、スイーツはとても美味しかったし、そのあとにした買い物も手痛い出費ではあったが、ものすごく楽しかった。……帰ったら多分、というより確実に母に怒られるだろうが。

「青森じゃ出来ないこと、全部やってから帰ろう」そんなことを言ったのはどちらだっただろうか。
その一つとして仄香とあの子は地下鉄に乗った。
これがよくなかった。

運悪く、二人が利用した地下鉄で敵性体と遭遇。混乱に陥る人々を嘲笑うかのように簡単に殺してゆく。
そこかしこに血溜まりができ、人が折り重なるように倒れている。


……それは、あの子も例外ではなくて。



あの子は仄香の目の前で帰らぬ人となってしまった。



あの子の死は小さな田舎町ではすぐに広まり、仄香には同情と見せかけた好奇心の目が絶え間無く刺さる。退屈な田舎町では、生き残った仄香とあの子の死はただの娯楽でしかなかったのだ。
そんな状況から両親は仄香を救うために、母方の親戚を頼り関東へ引っ越した。幸いなことに事情を理解してくれた親戚は快く手を貸してくれ、父も支店に異動が決まった。

高校二年生の秋、新たな学校での生活が始まる。

あの夏に、全てを置いたまま。





高校二年の秋に東京の寮付きの高校に転校。両親には「引越し先の高校ではダメなのか」「わざわざ怖い思いをした東京に行くことはない」と言われたが、無理矢理に納得させた(というより押し切った)。部活は友人に誘われるまま華道部に入部。卒業後は実家に戻ることなく、都内の大学に進学し一人暮らしを始める。
22歳で東京地下鉄株式会社に新卒として入社し、一年の訓練期間と後方での避難誘導の業務を経て正式に鐵燈隊第3小隊に配属される。

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作者名:ツツジ | 作成日時:2022年7月10日 13時

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