6 ページ7
・
合同訓練の時間よりも早くに来てしまった東は時間が来るまで自主練でもしようと場所を探す。と言ってもまだあまり人が来ていない為がら空きだった。どこにしようかと迷っていると最近弟子になったばかりのAを見つけた。相変わらず腕が良い。メキメキとその頭角を現している。
隣に人の気配を感じたらしいAはチラりと横を見て、それが東だと分かればヘッドフォンを外して挨拶をした。そのヘッドフォンからは今日も音漏れをしている。
「そんな大音量で聞いてたら難聴になるぞ。」
なんて笑いながら言えばAは首にかかったヘッドフォンに少しだけ触れて「うん、でも、」と口を開く。アイビスを構えようとした東は手を止めて隣を見た。
「そうでもしてないとやってられないから。」
覇気の無い瞳でどこか遠くを眺めるように呟いた。一瞬その意味が分からなかった東だったが、妹にはサイドエフェクトがあると確か鳩原が言っていた。人の心の声が聞こえるサイドエフェクト。菊地原の強化聴覚とは違う。彼の様に音を聞き分ける事が出来る訳では無い。単純に通常の聴覚に+αで心の声が聞こえるだけ。しかしそれは、影浦の様に自分に向けられたものに限らずその空間にいる人間の声が聞こえるもんだから彼女は人混みを毛嫌いする。それらを遮ろうと声を音で誤魔化す。
なんて返そうか迷った東は結局「そうか、」としか返せなかった。再びヘッドフォンを付けようとしたAを見て東も今度こそアイビスを構える。しかしその時ふいに聞こえた声にAの手は耳まで来て止まった。
「あいつだろ?鳩原の妹。この間二宮隊の隊員撃ったらしいぜ。」
その声は東にも聞こえて後ろを盗み見た。C級の隊服を着た三人組だ。「耳を貸すな」と開きかけた東の口は止まる。そんな事を態々言わなくてもAは相手になどしていない顔だった。
「姉貴が遠征選抜取り消されたから妹がリベンジに来たのか?」
その声にAは後ろを振り返る。生気の宿らない黒い瞳は不気味に見えて三人は一瞬怯んだがすぐに小馬鹿にするような笑みを浮かべた。
「それ、どういう意味?」
徐に立ち上がりゆっくりと三人に近付いた。何もAは三人に怒ってる訳では無い。単純に疑問に思ったのだ。彼女は何も知らないから。姉が姿を消した事しか知らないから。家の誰も口を開かなかったから。
___何なら、鳩原未来を忘れていたから。
134人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はな(プロフ) - レモン味のかき氷さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉…✨鳩原先輩関係の人主人公にした面白いんじゃね?っていうノリで作っちゃいました笑 原作でも謎多き、って感じなのでめちゃくちゃ捏造しまくると思いますが、これからも面白いと思っていただけるよう頑張ります! (2022年6月5日 18時) (レス) id: 906e49b810 (このIDを非表示/違反報告)
レモン味のかき氷(プロフ) - コメント失礼します!最初に、この作品の発想から凄いです!!同じ作者として、予想できない展開等あったので、時には楽しんだり、時には衝撃を受けました!リアルの方でお忙しいと思いますが…更新頑張ってください💪🔥 (2022年6月5日 16時) (レス) @page4 id: e6207c7e03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はな | 作成日時:2022年6月4日 18時