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犬飼の言った通り、Aは意図して影浦を避けてる。だってあの人はちゃんと気付くから。影浦雅人の前ではどんなにチョコを重ねても無駄なのだ。
「ただでさえ感情受信体質なんて厄介なもん抱えてんの。同じ隊に犬飼先輩がいたら可哀想でしょ?」
「俺に被害飛ばさないでー。」
Aは犬飼と似ている自覚がある。影浦が何故犬飼を嫌ってるかも知ってる。表情と内心とが一致してないからだ。そうなれば必然的に影浦はAも嫌いの類になるだろう。自分が影浦の負担になるのならば身を引こうというだけの話だ。
「カゲさんはねぇ、自分達と違って純粋なの。ひねくれて見えるけど本当は純粋なんだよ。真っ白でピッカピカ。人は美しいものだって未だに信じてる。でもさ、人間誰しも二面性はあるもんでしょ?恋人の前で、家では想像も出来ないくらい豹変しちゃうのと一緒。」
だから恐らくだが、影浦は荒船の様な真っ直ぐで裏表の無い人間が好きなんだろう。それは犬飼もAも同じなのでその気持ちは非常によく分かる。
「でもそれでいくと、カゲと似たサイドエフェクトのAちゃんもカゲと同じ様に、外面の内面が一致しない奴は嫌いなんじゃないの?」
「そうでもないよ。人間はそういうもんだって割り切ってる。だから__」
そこまで続けてAは口を閉じた。言葉は続かなかったのに、犬飼には何故かその続きに何を言おうとしたのか分かってしまった。だって、その時の目が、何もかもを諦めてる様に見えたから。
犬飼は途端に言い様のない焦燥感を感じた。この子も鳩原の様に誰にも言わずに遠くへ行くのではないかと。
時刻を見ればもうすぐ17時だ。二宮隊はこの後防衛任務がある。そろそろ作戦室に戻ろうとベンチを立った。立って、立ち去る前に犬飼はAの前にしゃがみ込んだ。下から見上げる彼女の顔はまだまだ幼い子供の顔だ。
「Aちゃん、俺と約束してよ。」
犬飼は柄にもなくその小さな手を縋るように握った。
「置いてかれた側の気持ちはAちゃんも分かるでしょ?頼むから早まった真似はしないでよ。」
「うん、しないよ。………ねぇ、犬飼先輩。」
___似た者同士仲良くしようね。
その言葉はまるで呪いのようでもあった。
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はな(プロフ) - レモン味のかき氷さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉…✨鳩原先輩関係の人主人公にした面白いんじゃね?っていうノリで作っちゃいました笑 原作でも謎多き、って感じなのでめちゃくちゃ捏造しまくると思いますが、これからも面白いと思っていただけるよう頑張ります! (2022年6月5日 18時) (レス) id: 906e49b810 (このIDを非表示/違反報告)
レモン味のかき氷(プロフ) - コメント失礼します!最初に、この作品の発想から凄いです!!同じ作者として、予想できない展開等あったので、時には楽しんだり、時には衝撃を受けました!リアルの方でお忙しいと思いますが…更新頑張ってください💪🔥 (2022年6月5日 16時) (レス) @page4 id: e6207c7e03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はな | 作成日時:2022年6月4日 18時