検索窓
今日:23 hit、昨日:4 hit、合計:38,537 hit

28 ページ29




会議室を出たAは肩に入った力を抜くように息を吐き出した。
会議室で待っていたのは昨日声をかけた根付ではなくて、知らない男の人だった。話を聞かせて欲しい、なんて言っておいて実際は尋問と変わりないなと思った。携帯の時刻を確認すれば随分時間が経っていて、作戦室に行っても隊員はもう帰ってる頃だろうなと予想する。鳩原から何か聞いてるんじゃないのかという質問にAは知らないと通した。だって本当に知らないのだから。未来が何かを企んでいればAだってそれを無視する事はしない。
もう一度息を吐いてからメッセージアプリに影浦から連絡が来てる事に気付いた。「かげうら」にいるから飯食いに来いという内容だったが、お好み焼きを食べる気分ではなかったし、今は何も喉を通さないだろうと思った。何より隊員もそうだがら影浦に今会うのは気が引けた。返信するのも面倒でそのまま携帯をポッケに突っ込む。
自販機で水を買って、帰る気にもならずに危険区域内のいつものアパートの屋上へ向かった。


「珍しくお酒は飲んでないんだ。」


背後から聞こえた声に振り返れば迅が片手を上げて近寄った。何で迅がお酒の事を知ってるのだと思ったが、彼のサイドエフェクトがあればAがお酒を飲んでる未来を見るなど容易いのだと思って納得した。


「ねぇ迅さん。」
「うん?」
「未来が向こう側に行くのは視えてた?」


我ながら嫌な質問をしてると思った。数秒の沈黙の後、迅はゆっくりと口を開いた。


「うん、視えてたよ。」


その答えにAは差程驚かなかった。ただ、そうだろうなと自分の予想が当たっただけだった。むしろ視えてなかったと答えられた方がAは不審に思っただろう。


「俺を恨んでるか?」
「どうして?」


迅の質問にAは不思議そうに返した。それに今度は迅が不思議そうにキョトンとした。


「恨んでないの?」
「うん。自分はそんな勝手な人間なつもりはないよ。」


遠くを眺めるAに迅は依然キョトンとした顔だった。そしてそっと目を閉じて「そっか」と返す。
Aだって人の事は言えないのだ。心の声が聞こえるなんてサイドエフェクトを持っておきながら肝心な事は聞いてないのだから。


「俺には視る事はできても、どうにもできない未来ばっかりだ。」
「…そうだね。」

29→←27



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (63 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
134人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

はな(プロフ) - レモン味のかき氷さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉…✨鳩原先輩関係の人主人公にした面白いんじゃね?っていうノリで作っちゃいました笑 原作でも謎多き、って感じなのでめちゃくちゃ捏造しまくると思いますが、これからも面白いと思っていただけるよう頑張ります! (2022年6月5日 18時) (レス) id: 906e49b810 (このIDを非表示/違反報告)
レモン味のかき氷(プロフ) - コメント失礼します!最初に、この作品の発想から凄いです!!同じ作者として、予想できない展開等あったので、時には楽しんだり、時には衝撃を受けました!リアルの方でお忙しいと思いますが…更新頑張ってください💪🔥 (2022年6月5日 16時) (レス) @page4 id: e6207c7e03 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:はな | 作成日時:2022年6月4日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。