17 ページ18
・
「鳩原未来の妹」という立場は随分注目を浴びるらしい。玉狛の自称実力派エリートの妹でも、総合一位の攻撃手の妹でもない、冴えない女の妹の立場は随分目立った。そこに不快感だとかを抱きはしないしその気もない。ただ、聞こえて来る声は非常に気になるものだった。
「珍しくヘッドフォンしてねーじゃん。」
手持ち無沙汰の状態でロビーのベンチに腰掛けていれば二つの缶ジュースを持った当真が片方Aに渡しながら隣に腰かけた。「どーも」とお礼を告げて缶を開ける。
「ひでぇ顔してたぞ。」
当真の見たAの顔には少しの不信感も不安が出ていた。同時に顔色も良いものとは言えない。目の下には隈も出来ていた。後半二つはサイドエフェクトの関係で聞こえて来る声に酔ったのと寝不足だろう。「そんな酷い顔だった?」と尋ねるAに「スゲェぶさいく」と返す。女子に向けていい台詞でないのは当真も重々承知だ。ここに影浦隊がいない事にホッとした。彼らはあれで末っ子二人を可愛がってるから。
「手厳しいなぁ。」
抑揚のない声に当真は思わず動きを止めた。以前の鳩原と同じ事を言っていたから。鳩原がいなくなる前日に言っていた。
遠征選抜が取り消されて、射撃場で一人残って自主練をする鳩原に当真は声を掛けたのだ。追い詰められた様な切羽詰まった顔をしていたから。その時も当真は「ひでぇ顔」だと言った。そんな当真に鳩原はAと同じ事を言ったのだ。どうでもいい所で血の繋がりを感じた。
「んで?お前の嫌いな人混みでヘッドフォンも付けずに何聞いてたんだよ?気になる男子の心の中か?」
「残念だったね当真さん。お生憎想い人はいないんだなぁ。」
「それじゃあ何してたんだ?」も首を傾げる当真の声を耳にAは目を細める。元より表情筋が仕事をしない顔だ。その顔で更に目を細めてしまえば、それは獲物を見つけた殺し屋の様だとすら感じた。
「ちょっと情報収集?」
「何だそれ。」
「自分はどうやら鳩原未来の妹だと噂されやすい立場らしい。」
そこで当真はあらかた察してしまった。鳩原に関する何かを聞いてしまったのだろう。
134人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はな(プロフ) - レモン味のかき氷さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉…✨鳩原先輩関係の人主人公にした面白いんじゃね?っていうノリで作っちゃいました笑 原作でも謎多き、って感じなのでめちゃくちゃ捏造しまくると思いますが、これからも面白いと思っていただけるよう頑張ります! (2022年6月5日 18時) (レス) id: 906e49b810 (このIDを非表示/違反報告)
レモン味のかき氷(プロフ) - コメント失礼します!最初に、この作品の発想から凄いです!!同じ作者として、予想できない展開等あったので、時には楽しんだり、時には衝撃を受けました!リアルの方でお忙しいと思いますが…更新頑張ってください💪🔥 (2022年6月5日 16時) (レス) @page4 id: e6207c7e03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はな | 作成日時:2022年6月4日 18時