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ページ6

少し硬めの紙の裏面で踊るボールペンのインク。
所々潰れていて読むことができないが、そこには目に馴染みのある不規則な記号の羅列が並んでいる。


「…楽譜……?」

「そうっ!多分今までで一番の傑作!!」


どれ、試しに読んでみようと手書きの譜面と睨めっこする。
読める部分もあるのだが、なにせ五線がフリーハンドで書かれているため時々音階の判別がつかない。並行で交わるはずのない五線が入り乱れている箇所も見受けられるほどだ。最早古代文字にすら見えてくる。
あっさりと解読を諦めた私は、それじゃあ、と別れを切り出すつもりだった。


「せっかく見つけてくれたんだし、何かお礼しなきゃな」

「へ、いいよそんな、探したのも見つけたのも私の勝手だし」

「いや、その辺はきっちりしておくべきだろ」


そう言って、うーむと悩む仕草を見せる。
悩むくらいならこんな小さなことにお礼なんて要らないのに。
そもそも、もう卒業して別の高校に行ってしまうのだから会える口実もないのだ。
月永くんは夢ノ咲学院のアイドル科に行くと風の噂で聞いた。アイドル科に進学するだけでも珍しいと噂になるくらいだ。卵とは言え人前に出る仕事をするのだから尚更会う機会はない。


「どうせこれで会う機会は無くなるだろうし今すぐ渡せたほうがいいよな……そうだ!おまえに曲を書いてやろう!」

「え、は?」

「紙!紙ある!?ペンは持ってるんだけど!」


一人考えにふけっているところをいきなり肩をたたかれ至近距離で話される。
肩に手が触れているとか距離が近いとかそう言った思春期らしい心拍数の上昇なんかなくて、何故だかすごい剣幕で迫って来る彼に気圧される形で鞄を漁る。
だが紙はあいにく鞄に入っていない。


「ごめん、持ってないや」


だからお礼はいいよ。そう言おうとした私を遮ったのは、余りにも純粋すぎる少年の笑顔だった。


「あぁ、これがあった!」

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雫月(プロフ) - (名前)さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます〜!;;お楽しみ頂けたようなら何よりでございます^^ (2018年8月24日 16時) (レス) id: 85139be9d2 (このIDを非表示/違反報告)
(名前) - 読んでいてとても心地がいい小説でした。 (2018年8月23日 12時) (レス) id: fe02a3a839 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雫月 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年3月31日 16時

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