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探し始めて五分も経たない頃だろうか、色とりどりのチューリップがお行儀よく並んで咲いている花壇の隙間に白い何かを見つけた。大きさ的にも私たちが探している月永くんの紙にも見える。
こんなにあっけなく見つかるだろうか、いや、多分違うだろうななんて思いつつ紙を手に取れば、真っ先に目に入ったのは楷書で書かれた筆文字。
『卒業証書 月永 レオ』
意外すぎたその文面に驚きを隠せない。
ひえ、なんて間抜けな声を漏らしてしまうものだから、月永くんが私のもとまで走り寄ってくる。
「どうした、虫でも出たか……ってあぁ!あった〜!!」
「ひぃっ」
耳元で大声を上げないでください。
そんな注意も聞き流し、月永くんはよかった〜、と胸を撫で下ろしている。こちとら全然よろしくないのだが。
月永くんが探していたものというのは卒業証書ということだろうが、一体全体どういう経緯で卒業証書を落とす羽目になったのだろうか。卒業式で受け取った直後、そのまま綺麗に筒に入れてもらったというのに。写真撮影で取り出したとしてもどこかに置いておくでもなくすぐにしまうだろうに。
「わははっ、おれの最高傑作は無事だったぞ良かった〜!
これが見つからないなんてことになったら世界の損失だからな!ありがとう助かった!」
そう言いながら彼は、ぱん、と皺を伸ばすように証書を広げる。こちらに向けられた証書の表面は、金箔に陽光が反射してキラキラと輝いている。
晴れやかな笑顔。自分への自信。お礼の言葉。
それは結構なことだけれども、私としては一つ突っ込みたい。
「その裏面、何が書いてあるの?」
訝しげに聞く私の表情が見えていないかのように、彼は自慢気に証書の「裏面」を見せた。
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雫月(プロフ) - (名前)さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます〜!;;お楽しみ頂けたようなら何よりでございます^^ (2018年8月24日 16時) (レス) id: 85139be9d2 (このIDを非表示/違反報告)
(名前) - 読んでいてとても心地がいい小説でした。 (2018年8月23日 12時) (レス) id: fe02a3a839 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雫月 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年3月31日 16時