＊ ページ3
｢ふぅん、やっぱおまえも卒業生か！見覚えはあったけどいまいち同級生って確信が持てなかった！｣
悪びれもせずに陽気に笑いをこぼす彼は、さながら春に咲く太陽のようで。
まじまじと顔を見つめられたのち、はっと思い出したように｢さっきの紙はどこか｣と私に問う。
さっきの紙、とは今しがた私のもとへ飛んできた紙のことであろうか。誰のものかは分からなかったが、あれは彼のものだったのかと合点がいく。
｢……あれ、どこ行っちゃったんだろう｣
｢ない？｣
｢見失っちゃった、かも｣
そう答えると月永くんはあからさまに肩を落とす。それだけ大事なものだったのだろう。
世界的損失だのなんだのと大袈裟ではないかと思うような嘆きが聞こえるが、あの紙にそれほど大事なものが詰まっているのだろうか。
｢ねぇ、月永くん｣
｢ん？｣
｢もし良ければ……手伝おうか？探すの｣
これはほんの興味本位だ。
もう卒業してしまうから会うことは無いかもしれないけれど、それだけ彼が大事にしているものが気になったのだ。それに、最後の学校探検というのもなかなかに青春らしくて悪くない。
釣りがちの翡翠が驚きと感激を以て見開いて、キラキラと眩しい光を孕んだ。
｢えっ、いいのか？おれたちそんな仲良くつるんで来たわけじゃないし、顔見知り程度なのに｣
｢いいよ。今から仲良くなろ、今から友達ってことで！｣
｢わははっ！いいな、そういうの！青春っぽくていい！
あぁ、今日はたくさん名曲が生まれそうだ……♪｣
名前は｢月永｣なのに、まるで太陽みたいに明るい人だ。
そんなことを思いながら、ずんずんと歩みを進める月永くんの後を追いかけた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雫月(プロフ) - (名前)さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます〜！；；お楽しみ頂けたようなら何よりでございます^^ (2018年8月24日 16時) (
レス) id: 85139be9d2 (このIDを非表示/違反報告)
(名前) - 読んでいてとても心地がいい小説でした。 (2018年8月23日 12時) (レス) id: fe02a3a839 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雫月 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年3月31日 16時
