深く不覚、愛して【東京喰種】

don't love9 ページ10

少し走っただけで切れる息。


ほんと、情けない。


貴「はぁ…はぁ……ひゃっ！？」

細い路地ですれ違った人とぶつかる。足が縺れて後ろに倒れそうになると、ふわっと優しく抱き留められた。


「……大丈夫ですか？」

中性的な声に瞼を上げるとくりくりした大きな瞳をこちらに向ける…女の子？


貴「あ、えと…大丈夫…です？」

「ここ、怪我してるですよ」

指を指された箇所を見ると、じんわり血が広がっていた。

路地幅が狭かったから擦れたのかも


するとその人はポケットから絆創膏を出し、おぼついた手つきで貼ってくれた。

たまたま絆創膏持っててよかったです、と楽しそうに笑う彼女に名前を訪ねた。

貴「あ、ありがとう…！あの…貴方の名前は？」

什「僕は、鈴屋什造です」


…ん？僕？


貴「あ、え？男の子…？」

什「ん〜〜性別はないですけど…まぁ、男に分類されるんですかねぇ」


性別はないけど…男の子。ふむふむ

まぁ、確かに女の子にしては大きいよね。男の子にしたら小さいけど……

私より10cm近く大きい。羨ましいなぁ


貴「私は、水谷Aっていうの。本当にありがとう」


お礼をさせてと言うと、彼は暫く悩んだ末、思い付いたような仕草をした。


なんか可愛いな…なんて

什「じゃぁ、暇なので遊んでくださいです」


貴「…へ？」


什「へ？じゃないです。ほら行くですよ」



グイグイ腕をひっぱられる。

痛い痛い！




あ、そういえば大学…


ちらりと彼を見ると、ニコニコしていて悪い気はしない。


まぁ、いっか。



頬を綻ばせると、彼は力強く私の手を握った。





まるで、捕まえた獲物を離さないように。






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