不必要 ページ35
貴「ヒナちゃんがっ…」
息を切らして家具コーナーにいたカネキさん達に助けを求める。
自分の不甲斐なさに、まともに皆の顔を見ることができなかった。
万丈「ヒナちゃんが…どうしたんだよ」
あきらかに動揺の色を浮かべる万丈さんに、歯を食いしばって答えた。
貴「あたしの……せいで…ッ…いなくなっちゃった…」
激しく吐く吐息が白くて、視界が滲む。泣いたって謝ったって、責任はあたしにある事実は変えられない。
貴「ごめんなさいッ…あたし…探してきますッ!」
「待って」
ヒナちゃんを見失ってしまった悔しさと、悲しみの瞳で見つめられる虚しさとが絡み合って、押し潰されそうな体を震い立たすあたしに制止を促したのは
貴「カネキさん……」
うつむいている表情は読み取れなくて、嫌な汗が垂れる。
ゆっくり開いた彼の口から出た言葉は、あたしの心を大きく抉った。
カネキ「Aさんは家に帰ってて」
貴「______…え?」
カネキ「万丈さん達はトイレ付近のお店を」
万丈「お、おおッ!」
イチミさん達を連れて走っていく万丈さんを見届けた後、ゆっくりこちらを向いたカネキさんの目は、酷く鋭くて
全筋肉が何かに支配されたように固まって動かなくなる。
貴「あたしも…」
カネキ「…ダメだ。Aさんは、未だ信用できない」
呟いた言葉も、崩れるように散っていく。
信用?信用って…何?
喉元まで出かかったものも、つっかえてそれ以上を拒否した。
カネキ「君に悪いけど…月山さんの妹なんだ。このコンディションを見ていつ僕らを狙ってくるか分からない」
自重してくれ、と彼は言う。
何それ…自重って…あたし達仲間じゃなかったの?
仲間だったから、一緒に暮らしてきたんじゃないの?
貴「あたしは…そんなことッ!」
カネキ「しない、とは100%言い切れませんよね?」
挙げ句の果てには、敬語を使って他人行儀。
今までのは、何だったの
全部、嘘?
カネキ「ヒナミちゃんは僕らが助けます。…だから、貴方は帰って待つなりしていてください」
それだけ言ってカネキさんは走って行ってしまった。
足が、ガクガク震える。
ふらふらとした足取りで出口まで向かった。
道中、たくさんの人とぶつかった。中には、血生臭い臭いがして顔をしかめた。
外に出た途端、我慢していたものがドッと溢れて
あたしは、不必要なんだと
思い知らされた瞬間だった。
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ユウ(プロフ) - 食品コーナーでいい匂い??? (2015年6月27日 21時) (レス) id: 89af0c6931 (このIDを非表示/違反報告)
? - 素敵な作品でした。(・∀・)⊃ (2015年5月6日 7時) (レス) id: 1c14e3af80 (このIDを非表示/違反報告)
白龍(プロフ) - 駿浬さん» めちゃ良かった!尾赫の赫者ってどんなんなんだろーねwリア友に描いてもらえない?りゅうりぃー、僕のために描いてくださいよぉ〜。 (2015年3月31日 21時) (レス) id: f35eeeecc2 (このIDを非表示/違反報告)
駿浬(プロフ) - 柏木 エリさん» ホントですか!ありがとうございます♪リア友の絵飽き飽きしてたんです…URLくだされば、ぜひ載せます!(・ω・´ (2015年3月31日 20時) (レス) id: d96e53dc02 (このIDを非表示/違反報告)
駿浬(プロフ) - kouさん» ふふ……照れちゃいますねっ★←ありがとうございます。続編どうか見てくださいね〜 (2015年3月31日 20時) (レス) id: d96e53dc02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:駿浬 | 作成日時:2015年2月22日 20時