今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:1,509 hit
小｜中｜大
02.興奮冷めぬまま ページ2
.
「今日も御幸とキャッチボールしたのかよ」
たった10球のキャッチボールが終わって、帰る準備をしていたとき、
ちょうど出会った倉持に話しかけられる。
倉持は私の御幸への淡い恋心を知っているから、
よくこうしてからかわれる。
「うん！今日さ、褒めてもらえたんだよ！」
「耳元ででけー声出すな！」
一度耳を塞いだ倉持も、私の嬉しいという気持ちに気付いたのか、
「で、なんて言われたんだよ」と詳しいことまで聞いてくれる。
「球が速くなったって言ってもらえた！きゃー！」
「興奮しすぎだバカ」
思い出すだけでさっきのドキドキが蘇ってくるよう。
興奮のあまり叫ぶ私を、倉持が冷たくあしらう。
御幸に褒められることってあまりないのだから、
気持ちのコントロールができなくてもいい。
嬉しいから叫ぶ、よし、これでOK。
「倉持も早くすきな子見つければ？楽しくなるよ」
「余計なお世話だよ」
倉持はそう言ってくるりと背中を向ける。
「倉持ー！今日も聞いてくれてありがとう！」
遠ざかってく背中に、そう叫べば、
倉持はちらりと振り返って、右手を軽く挙げた。
「またな」
にひっと笑顔を浮かべて、倉持は寮の方へ歩いて行った。
私も帰ろっか。
私はグローブの入った巾着を抱きしめながら、歩き出した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
