【◇】御幸、ストレート投げるから (ページ1)

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01.お誘いページ1

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練習が終わって、今までそわそわしてた私は、
やっと解放された気がした。

お兄ちゃんのお下がりのグローブを持って、
ゆっくりとした手つきでキャッチャーのプロテクターを外す御幸のところまで走る。

「御幸！キャッチボールしよ！」

ずっと握り締めてたボールを御幸に渡すと、
「仕方ねえな、10球だけだぞ」と笑ってくれた。

その笑顔に胸がきゅんとときめいちゃう。

本当、野球をしてる時はすごく生き生きしてるよ。

御幸から10メートルぐらい離れたところまで下がって、
御幸に向かって手を振る。

御幸は苦笑いしながら、右手をしならせボールを投げた。

私はそれをパシッと捕ると、「ナイスボール」
いつもの御幸の真似をしてそう言ってみる。

「早く投げろよー」

御幸に急かされ、私もボールを投げる。

私が投げたボールはゆったりとした放物線を描いて、
御幸のミットの中にポスっと収まった。

「ナイスボール。球、前より速くなってねーか？」

そうやってニヤリと笑う御幸に、私もニヤリと笑い返す。

些細なボールの変化にもすぐ気づいてくれる。

それが嬉しくて、いろんな人に受けてもらって練習していたのだ。

「でしょー！頑張ったんだからね！」

私が胸を張ると、すかさず御幸から「投げるぞー」の声。

やっぱり少し意地悪。

少しムッとした表情を見せながら私はグローブをはめた左手を頭上に挙げた。

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