落ちた鬼灯。【OP】 (ページ12)

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「そういえば、私達の話はよく聞いてもらってるけど、Aの話はちっとも聞いたことがないわね。」

Aの情報は、彼らがどれだけ調べても中々出てくるものではなかった。幼少期の頃のも確かにあるが、病弱で床に伏していたことしか書かれておらず、尚且つ海賊に攫われたことで空白が生まれていたから。そうですね、とAが呟いたのと同時に、グラスの中の氷が溶けてカランと音を立てた。

「小さい頃から、体が弱かったのは知ってらっしゃりますよね。それで常に横になっていましたから…ろくに、友達も出来なくて。」

それで、町が海賊に襲われて。Aは、かすかに声を震わせていた。

「逃げられたと思ったら、直ぐに捕まっちゃって…。それで、小さな物置を私の部屋の代わりとなって…、そこにたまたまあった本を読んで…。元々本を読むのは好きだったので、読み書きも出来たんですけど。」

「…辛いことも沢山あったでしょう。」

カリファがAの背中を摩ると、それと同時に彼女の瞳からは一粒涙がこぼれ落ちた。

「……辛くなかった、ことはありませんでした。ここで死んじゃうんだって、何度も思った。時折、向けられる視線に気味の悪い色を感じて、それで、…怖くて。」

＿＿ああ、聞かない方が良かった。カリファはふと自分の発言に後悔した。情報を引き出すとはいえ、相手があまりにも可哀想だと。

「ごめんなさい。…でも、大丈夫よ。もう大丈夫だから。」

確証の無い言葉をと、カリファはそう思いながらもAの背中を撫でた。私の方こそとAが謝るのを見て、カクは謝らんでいいとAの頭を撫でた。

そして、ルッチの方を見て。

＿＿これで良かったんか。
＿＿…仕方の無いことだ。

耳打ちを。