239話 元に ページ7
-虹村side-
あいつが俺のこと虹村って呼ぶのなんて多分初めてだ。
人格が変わった湊と似たような冷たい目線、聞いたことのない低い声。
喧嘩とかいろいろしてきたけどマジでビビった。
A「お前さ、何してんの?」
体育館の裏に連れてこられ、腕組みをしたAは俺のことをじっと睨んでいる。
A「最後の夏、最後の全中。絶対優勝しようって言ったよな?退部したやつらの分も。元ではあるとはいえ、キャプテンだったお前が空気壊すな。」
とはいえ、こう言われて黙ってる俺じゃない。
寝ていて遅れてきたなんて、遅れていい理由にならない。
虹村「紫原とお前が初めからちゃんとすればよかった話だろ?」
A「はぁ…。見ててバレバレなんだよ。それだけじゃねぇだろ?思ってること。」
心臓が止まるかと思った。
言われてることが図星で、まっすぐ見つめてくるAが怖い。
A「それが理由で後輩のこと怒鳴りつけたり、空気悪くすんならこんな感情知らない方がよかったかもな。」
虹村「どういうことだよ。」
いや、ちょっと…待て。
言わないでくれ。
お前が何を言いたいかなんて分かってる。
A「修、引退するまで一旦元に戻ろう。」
虹村「はっ?嫌だけど。」
A「チームのためだから。」
悲しそうな笑みを浮かべながら言ってきたAは逆に俺の怒りを増幅させた。
虹村「またそうやってチームのためとか言って自分の気持ちはどうでもいいのかよ!」
大きい声を出すと小さく体がビクッと震えたのが見えた。
腕を組み、顔は強張ったままだけど水色の瞳から出ている殺気が少し薄まった。
A「俺は帝光バスケ部の副主将だ。勝つことが絶対。違うか?そのためなら俺の気持ちなんて犠牲にしていい。」
虹村「はぁっ…?そんなん狂ってんぞ。」
言っちゃいけない言葉だっていうのは分かってる。
でも、そんなことを考えられるほど今の俺は冷静じゃない。
A「だからどうした?」
俺たちの間に沈黙が流れた。
こいつとは気が合うと思ってたけどさすがにこれは理解できない…
虹村「お前が言うなら一回冷静になるか。分かった。とりあえず練習に戻ろう。」
背を向けて体育館の方へ行こうとすると、後ろから長いため息が聞こえた。
ちらっと後ろを見るとAは頭を抱えていて壁にもたれかかっていた。
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作者名:雪 | 作成日時:2019年2月27日 22時