262話 会いたくなかった ページ39
-虹村side-
A「無理して笑う以外に俺が正気でいられると思うなよ…。」
ボソッと呟いた言葉を俺は聞き逃さなかった。
この状況は俺でもくる。
慰めの言葉を送ろうとした瞬間、Aは狂ったように大声で叫び始めた。
A「また俺のせいだ!湊も玲も紳助も俺のせいで部活をやめた。次は征十郎たち…。もう無理だ。耐えられない。」
虹村「なんでお前のせいなんて言うんだよ。何も悪くないだろ?」
A「全部、俺のせいだよ。征十郎に湊みたいにもう一つの人格があることにも気づいていた。征十郎を副主将に推薦したのも俺だ。完璧だから安心だって。コートの外からしか見てられない俺を支えてくれるから。でも、忘れてた。征十郎も普通の中学生だ。押し付けすぎた…。」
早口に言葉を繋いでいく。
体育館にいる人たちは全員俺たち2人を見ている。
A「大輝も。もっと早くに話していたら助けられていたかもしれない!テツヤに黛さんのようになって欲しいと願わなければ辛い思いなんてさせなかった。全部、全部、全部!俺のせいだ!バスケなんてやってなければよかった!」
その言葉を聞くと俺は頬を平手打ちした。
乾いた音が体育館中に響き、目の前には叩いた頬を押さえて驚いたように俺の方を見ている。
虹村「それ正気か?」
A「…。」
虹村「取り消せ。……取り消せ!今すぐ!」
肩を強く押してもAは下を向いたまま唇を噛みしめている。
そんな俺たちを見た黄瀬と桃井がオロオロしてるのが見える。
俺がこんなに怒ってるところ、見たことないもんな。
胸ぐらをグイッと掴むとAの水色の瞳と目が合った。
虹村「それとも、本当に思ってるのか?」
A「思ってる。もう…限界なんだよ。」
ダムが崩壊したかのようにAは一気に涙を流した。
最後にこいつが泣いたのを見たの…いつだっけ?
1年の全中か?
すぐに泣いてたAの涙を2年前から見てなかった。
湊が変わった後…
強くならなきゃ。
そう言ってたこいつを覚えてる。
A「お前と…お前らと…。出会わなければよかった…会いたくなかった。」
俺の手を無理やり離させ、会いたくなかったと強く言ったAはそのまま背を向けて雨が降り続いてる外に走り出した。
それを追う人は誰もいない。
みんな、ポカーンとあいつが出て行った扉を見ている。
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作者名:雪 | 作成日時:2019年2月27日 22時