最終話 これからも ページ32
A「起きてんなら自分で歩けよ。重かったんだからな。」
虹村「途中で起きたんだよ。」
大我に先に行ってもらい、修を下すと俺たちは手を繋いで歩き出した。
でもまだ少し酔ってはいるみたいでフラフラしながら歩いている。
A「みんなと話せて嬉しかった。ありがとな、この機会作ってくれて。」
虹村「別に。俺的にも面白い話いろいろ聞けたし。」
A「あー。俺が高1の時に出た試合をたまたま征十郎が見ていてそれで湊を洛山に誘った話とか聞いたことなかったしな。」
虹村「俺がアメリカに行ったあとにお前が号泣してた話とか。あと灰崎のとこに行ってたこととか?」
A「それはもういいんだよ!」
虹村「霧崎第一目指してたのとかも初めて聞いた。」
A「今は行かなくてよかったと思ってるけど。」
虹村「だな。」
修は酔うとヘラヘラ笑い出すから今も俺の横で笑っていて正直面倒くさい。
でもいつものちょっと怖い印象が変わるから可愛いな、とも思う。
繋いでいる手に当たる指輪をスッと指で撫でると修と目が合った。
虹村「んだよ?」
A「いやー?幸せだなって思って。」
虹村「お前マジそんなこと急に言うなって!」
マジ照れしている修を見て笑うと頭をグリグリと撫でられる。
中1の時のことを話して、いろいろ思い出して…。
まぁちょっと離れた時期はあったけどずっとこいつと一緒だったことに改めて気づかされて思った。
A「なー。修?一回しか言わねぇけどさ、お前と会ってなかったらどうなってたんだろうってぐらいずっと一緒にいるのがさ、すげぇ嬉しい。だからこれからも、一緒にいてくれ。」
修の顔がみるみる赤くなっていく。
何も反応しないから俺の顔も。
虹村「そういうとこずるいよな。あー…。やばい。」
その場で蹲り、右手で自分の顔を隠している修にグッと引っ張られ、バランスを崩すとそのまま抱きしめられた。
俺たちが付き合った日のことを思い出し、左手についている指輪を見た。
ここまでいろいろあったな…。
虹村「A、こちらこそ…これからもよろしく。」
A「おう。」
晩夏の、少し生暖かい風が吹きわたり俺たちの髪を揺らす。
合わせられた唇は、苦いビールの味がした。
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作者名:雪 | 作成日時:2020年3月21日 2時