職業：女優１０

拒絶の言葉 ページ23

＊吉沢亮 Side





最近、Aの様子が少し変だった。


LINEの返事が遅くなったり、電話になかなか出てくれなかったり。
出ても忙しいからってすぐ切られたり。
仕事があるからって、家にあんまり帰ってなかったりとか。


現場で会ってもぼーっとしていることが増えたし、話しかけても上の空。
空き時間も共演者の誰かと話したり遊んだりしてることが多かったのに、最近はずっと水田さんといる。


会う度に痩せて、メイクをしていてもわかるくらいクマが濃くなって。
溜息が増えて、何より仕事以外で笑っている姿を見なくなった。


何かあったの？って聞いても、Aの性格からして素直に答えてくれるとも思えない。
水田さんに聞いても



「吉沢君が気にすることじゃないよ」



と言って教えてくれない。



だからせめて気分転換くらいにでもなればと思って。
ただ、Aに笑ってほしくて。
みんなにお願いして、飲み会を開いてもらったはずなのに。









「くっついてこないでくれる？」


「鬱陶しかっただけ」


「まだいたの？」



初めてAから告げられた拒絶の言葉が、頭の中をぐるぐると回る。



何で？ どうして？


気付かないうちに、俺何かした？



小栗さんやムロさんが


「A、酔ってるんだよ」


「眠かったのかな？」



なんてフォローするようにいろいろ言ってくれるけど、そんな理由であんなことを言う子じゃないのはみんなわかってる。
自分の中で考えて考えて、ネガティブな俺が辿り着いた答え。





Aに嫌われた……？





少し離れた席で、環奈ちゃんの頭を撫でるAをぼんやりと見つめる。
その表情がなんだか泣いている様に見えたのは



Aが本心であんなことを言ったんじゃないって



「嘘だよ」って言ってくれるんじゃないかって



そう思いたかったからなのかもしれない。



いや、違うな。
俺が泣きたいのを我慢していたから、きっとそう見えただけなんだ。





そう見えてほしかったんだ。

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