54話 ページ10
渉「守られる側からしたら、これはどう映るんだろうな。裏切り者と思われるかもしれない。罰したやつを恨むかもしれない
俺たちが覚悟して罰を受け入れても、そいつらは嫌だよな。自分のための犠牲なんて、知りたくないだろ」
あの時のまふまふさんの表情が浮かぶ。彼の周りの人、そしてきっと彼自身も、神様から何をされて言われたのだろう
私たちは___
貴「私たちは……神は、間違っていたのですね。ずっと」
渉「俺は言ったぜ、姫様。善か悪かなんて曖昧だって。こんな大層なこと言ったけど、気まぐれに罪を犯すやつだっているんだ……後は、答えを自分で見つけてみな」
それはそうと、と手をパンパン叩く。すぐさま現れた女性に小声で何言か耳打ちすると、女性は微笑んで下がっていった
渉「ありがとうな、姫様。神様でここまであやかしに寄り添って考えてくれるやつはいなかった
まふのことも許してやってくれ。八つ当たりはあいつがしたことだけど、心根は優しいやつだ」
貴「いえ、こちらこそ無神経な発言を……え?」
私、まふまふさんとの件、話したっけ???
ハテナマークを浮かべる私に、少し意地悪そうな顔でニヤッと渉さんが微笑む
渉「前々からキツネの里の接触を伺っててな。そらるさんから情報は貰うけど、俺が動かない訳でもないぜ?」
貴「……えっと、つまり」
渉「うん。君が坂田とみたらし食べてたのも、毎回掃除中に同じところで転んでたのも知ってる」
貴「見ないでくださいよそんなとこ!」
あれやこれやと上げていく事象から逃れるように、頭を低くして耳を塞ぐ。聞こえない、聞こえない、何も聞こえない
渉「あー、あとこの前洗濯の時に、誰かの下着見つけてオロオロしながら顔赤」
貴「うわああああああ!!!やめましょう、やめましょう!!!」
大変失礼だが首元を掴んで物理的に黙らせる。いつまで喋る気だこの人!いや、このあやかし!
すると、襖の向こうから、先程から出入りしていた女性の声が聞こえた。救いの女神とばかりに反射でどうぞ!と答えると、笑いをこらえるような顔でしずしずと入室する
また卓を抱えていた。食事は終えたのでお茶だろうとぼんやり見ていたら、なぜか今度は渉さんの分がなかった。これは……
27人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:笹乃葉 | 作成日時:2023年7月5日 18時