夏祭り�� ページ24
そ「無警戒に男の腕の中で寝る？やっぱすごいねー」
ま「単にバカなんですよ。……ほら起きろ！」
ゆさゆさと揺さぶられ、微睡んでいた意識がぼんやり立ち上がる。ぐんにゃり見えた景色はまだ暗くて、いつものベッドより固い
貴「……なぜ、私は樹上で黒髪さんの膝の上に？」
そ「判断早いね。まぁ数分しか寝てないしな」
黒髪さんがすぐわかるよ、と言った次の瞬間
空が真昼のように明るくなった
貴「あっ……花火！たーまやー！」
そ「かーぎやー」
ドーンと大きな花が空に咲く。とても見やすかったから特等席なのだろうけど、周りに人は見当たらない
貴「見やすいし特等席やん。なんで周りに誰もいないの？」
ま「……下見ればわかると思うけど、落ちるなよ」
反射的に下を向くと、5階建てマンションから見た景色より遠いところに地面があった
貴「ぎゃぁぁぁぁあああああ！？！？」
予想外の事態に驚いて黒髪さんにしがみつく。お前はもう少し慎みを…という目線が白髪から来たけど構ってる余裕は無い。なんだこれツリークライミングでもしたか？
学校で体験した時には1m付近で酔ってリタイアしたから、全然距離とかわからんけど(実話)
そ「周りに人がいない理由はわかった？」
貴「わかったけど危なくない！？落ちたら死ぬよこれ！？」
ま「大丈夫。今のお前なら身体強化さえかければ痛いだけで済む」
貴「その痛いが嫌なんだよ！それだったら死んだ方が痛くないよ！」
ギャーギャーと騒ぐ私と花火の音が混ざってうるさかったのか、白髪がはぁとため息をついて杖を振る
すると、木々が動いて枝を私たちの方に伸ばしてきた。太い幹がいくつも重なり、桟敷のような場所が作られる
貴「さすが白髪！太っ腹！ハイスペック！しらが！」
ま「おい最後」
そ「別にまだ俺の膝の上でもいいよ？」
貴「枕が設置されたら考えるわ」
ゴソゴソと席まで移動すると、非常に花火が見やすくなった。二人も枝の上よりは席の方がいいのか、私の両隣に腰掛ける
しばらく会話もないまま、移り変わる空の花を眺めた。赤、緑、青、金色と様々な光が投影される
そんなことを繰り返していると、大きな花火が連続で打ち上げられる。わぁ、と誰の口からともなく歓声が上がる
恐らくそれが最後だったのだろう。後に残った煙を眺めて、感動と寂しさの余韻に浸っていた
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作者名：笹乃葉 | 作成日時：2022年8月25日 9時
