そらる誕生日�� ページ21
こまごまとした仕事を終わらせていくと、領主としての一日が終わる。就寝前にまふが部屋を訪ねてきた
ま「主様、本日のものです」
そ「ありがとう」
領民の訴えを聞くため、と称して設立された役職は自領・他領に関わらず情報収集を行うスパイのような役目を担っていた
パラリと紙をめくっていく。前回の情報が少し更新されただけで、目新しいことは無い
そ「他に変わったことは？」
跪いたまま、まふがちらりと周りに視線をやる。人払いをすると、こちらを向いて話し始めた
ま「先日の暗殺者の件です。目撃情報や証言を掴んだところ、ダンピールの可能性が高いとされています」
ダンピール、という言葉を聞いてドクンと胸が鳴った。なんでだろう？
ま「体格は160cm弱、ローブを深く被っているため顔はわかりませんが、目撃情報では子供かもしれないと……主様？」
そ「いや、続けてくれ」
ま「……、はい。暗殺者の操り主はルーンベルク子爵だと言われています。証拠はまだありませんが」
そ「まさか。ラッセンの傘下のやつが？」
ま「……まだわかりません。ですが確かな筋です。ここ数日、近くで目撃情報もございます。くれぐれもお気をつけください」
そう言ってまふは下がった。使用人が灯りを消すと、俺は寝台に横たわる。なんだか疲れているのに眠れない
護衛もいるから大丈夫だとは思うけど、まさか暗殺者が俺を狙うなど……言いしれない不安とよくわからない感情が込み上げてきて、ゆっくりと体を起こす
机に取り付けられた引き出しから護身用の短剣を取り出すと、月の光に照らしてみる。次の瞬間、その光が消えた
咄嗟に俺が窓の方を向くのと、相手がガラスを打ち破る瞬間は同時だった。夜に溶ける色のローブを深く被り、真っ直ぐに俺を狙ってきた
そ「くっ……！」
キン、と鳴ったのは剣だ。相手の武器は驚くことに素手だ
刃物が見えたため爪で相殺したのだろう。一瞬で長く伸びた爪が銀色に鈍く光る
そ「お前は誰だ。俺に何の用だ？」
「……わかっているでしょう？」
あどけない女性の声だった。そう言ってゆっくりとフードを脱ぐ
聞き覚えのない声だ。いや、知っている声だ
知らない顔だ。いや、誰よりも知っている顔だ
君は、彼女は＿＿＿誰だ？
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作者名：笹乃葉 | 作成日時：2022年8月25日 9時
