そらる誕生日�� ページ20
「おはようございます、カナタ様」
ぼんやりとした思考の中で、ハッキリした声が響く。……これは誰だっけ？
「本日はラッセン公爵様との面会がございます。時間に厳しい方ですので、遅刻などなさいませぬよう。それから、こちらは先日お渡しした資料の追加になります」
淡々と告げていく声に思い出した。そうか、筆頭側仕えのレオンだ
俺の小さい頃は教育係も勤めていたため、領主となった今でも彼は厳しい
レ「最近、近隣の小競り合いが激しくなり、何処の者ともわからぬ暗殺者が横行していると情報が入っています……くれぐれもお気をつけを」
そ「うちはまふもいるし、なんとかなるだろ」
レ「……わかりました、私から伝えておきましょう。あのような者でも裏の情報には役に立ちますからね」
そ「まだ言ってるのか。あいつを引き取って何年経つと思う」
レ「まだ仰っているのは貴方様です。そろそろ自覚を持って頂きたいものですね……領主と呼ばれる立場になったのですから」
寝ぼけていた頭がやっと覚醒した。そうか、俺は領主になったんだ
夢を見ていたせいか、どうにもその実感が薄くなっているらしい。差し出されたコーヒーをグッと流し込んだ
＊＊＊
堅苦しい挨拶を交わしたあと、ラッセン公爵は強面の口角を上げた
「いや、シュヴァルツ家のご子息様は立派になられましたな。これでは領地も安泰でしょう」
そ「光栄です。まだ若輩の域を超えませんが、皆様のご期待に添えるよう精進していく所存です」
「いえいえ、私共に出来ることがあればなんなりと仰ってください。
ところで領主様、先日の件について＿＿＿」
面会を終え、ホッとため息をつく。ラッセン公爵は友好的な方だが、情勢の安定しない今では気が抜けない
俺が領主として相応しくないと思えば一気に落としにかかるだろう。古参の彼は、多くの家臣に影響を与える
レ「カナタ様、妹君への縁談が来ております」
そ「……ああ、ラインハルトか？大きくなったな」
妹が小さいころから、嫁ぐことになっている相手だ。二人とも仲がよく、俺も彼とは遊んでいたことがある
レ「先代が決めた事項を、正式なものにしたいとのご要望です」
そ「わかった。後で妹も呼べ」
レ「はい。……カナタ様の方も来ておいでですが」
そ「俺はそういうのまだいいよ」
レ「またそのように。どなたか想い人でもいるのですか？」
いないよと答えた声が掠れた。なんでだろう、俺には好きな人なんていないはずなのに
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作者名：笹乃葉 | 作成日時：2022年8月25日 9時
