[ 短編集 ] 夢見の少女とユメ喰らうヴァンパイア【そらる】【まふまふ】 (ページ12)

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夏祭り⑩ ページ12

え、風景とか物あったっけ？

荒野みたいな空間にポツンと一軒あるだけなんだが、もしかしてあれ魔法で隠されてる？？？

目に見えて困惑しているのがわかったのか、掴まれたままだった胸ぐらを手放す。それ以上追求はされなかった

仲間同士のアイコンタクトで「こいつダメだわ」みたいなやり取りがされていることがわかる。これで解放されるかな……いや始末されるかもしれん。喋ったのは失敗だったか

男1「あんま手荒なことはしたくなかったんだがな……」

どこをどう見れば今の状況が手荒じゃないのか教えて欲しかったが、その言葉はまずい。空気にピリッと緊張感が走る

縛られたままでズリズリと後退するも、男は近づいてくる。前しか警戒していなかった私の体は、一瞬で後ろの男に押さえつけられた

咄嗟のことに受け身も取れず、倒れた拍子に顎を打ち付ける

貴「何しやがんだてめぇ！」

男2「この状況でよくそんな口聞けるよな、いいねぇ……美味そうだ」

舌なめずりをして好奇の目をぎろつかせる。悪寒が経つほど気持ち悪い

男1「おいおい、大事な人質なんだ。今は手出すなよ」

男2「えー、遅くなると報酬出し渋られるかもしんねーじゃん。なら今自分で食っとく方がよくね？」

男1「食ったら弱み握れないだろ。いいから大人しく待っとけ」

押さえつけられたままではあるが、ようやく気持ち悪い声が止んだ。それだけが救いだが、弱みとはなんだろう

口の中に入った砂利をぺっと吐き出して、おそらくまとめ役であろう正面の男をギッと見据える

貴「あんた達が狙ってるんじゃなくて、雇い主に頼まれてるだけなんだ。それは誰？」

男1「余計な勘ぐりはしない方が身のためだぜ、お嬢ちゃん。さっき連絡がついたから、そろそろあんたのナイトがこっちに向かってくるはずだ」

貴「……！お前ら、二人に何をした！？」

男1「お嬢ちゃんがナイトみたいだな。まぁ生きてはいるぜ、それ以上はわからねぇけど」

ドクンドクンと心臓が早鐘を打つ。祭りに行きたがったのは私だから、彼らに何かあったら私の責任になるだろうか

戦った私ならわかるが、二人は強い。話を聞く限り、ヴァンパイアの中でも強い方なのだろう

連絡がついたということは、彼らの仲間が知らせたということだ。もしかして、今頃＿＿＿

最悪のシナリオが頭をよぎり、ブンブンと頭を振って恐ろしい妄想を消す。大丈夫……だよね