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「・・・太輔、みっちゃんは純粋なところがいいんだからあんまり教え込まないでくれよ」
玉にはまったのってそういうところでしょ？と横尾は訝し気な顔で藤ヶ谷に視線を送る。反対に藤ヶ谷は口元を緩ませて、鼻歌交じりに携帯電話を操作している。楽しそうだね、と少し呆れたようなため息をつき、横尾は再度4人の写真を眺める。
「ところで太輔。千賀、って子は、他からの“貢ぎ物”って可能性はないの？」
取り入りたい奴なんてたくさんいるだろうから、と横尾は言葉を続けた。藤ヶ谷は首を傾げて肩を竦めてみせる。
「分からないけど、話を聞いた感じじゃ特に害はなさそう。そんなに気にしなくていいだろう」
「だけどさ・・・他に出し抜かれたりとかするのも困るし」
「今の玉は北山に夢中だから大丈夫だ」
むしろ、と藤ヶ谷は横尾が差し出した紅茶を口にしながら、思案を巡らせる。
「・・・どうして玉は北山をあんなにあっさり捕まえることができたのか」
まるで北山の行動を監視されていたかのようだ、と藤ヶ谷はカップの湯気に強い視線を送る。
「・・・太輔からの電話で何かを察したとか？今日電話するって言ってたよね」
「ああ、様子を窺うつもりでかける予定だったんだけど・・・渉に電話してたら授業の入りがギリギリになったからかけてない」
「へぇ・・・あ、じゃあ逆に玉が何かに勘づいたのかもしれないね」
「北山がここへ向かうことを知っている人間なんて・・・ほんの一握りしかいないはずなのに・・・例えば・・・」
渉とか、と藤ヶ谷はニヤッと含みのある笑みを浮かべて見せる。何かを見透かしているような小悪魔のような笑顔――横尾は思わず顔を引き攣らせてしまう。すると、バスルームの扉がガチャッと開く音がした。
「北山がシャワーから出てくるみたいだから・・・そろそろ部屋に戻る」
今の発言は忘れてくれ、と藤ヶ谷は携帯電話を胸ポケットにしまった。気にしてない、と横尾は首を振って写真を片付け始める。
「北山・・・玉に情を寄せ過ぎてミイラ取りがミイラにならなければいいが」
そのためにも、と藤ヶ谷はスッと立ち上がった。
「もっと心を惹きつける・・・俺を裏切れないほどに・・・」
おやすみ、と声をかけて、部屋に向かっていく藤ヶ谷の背中を見つめ、横尾はもう一度大きなため息を吐いた。
「やれやれ・・・ミイラになりかかっているのはどっちなのかな」
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2019年7月25日 1時
