6-1 side:K ページ3
6-1 side:K
「・・・よこーさん」
俺を出迎えたよこーさんは携帯電話をデスクの上に置き、足早に駆け寄ってくる。
「みっちゃん！太輔からうちに向かったって聞いてたのになかなか来ないから心配したよ！」
「本当に心配かけてごめんなさい」
藤ヶ谷がよこーさんに連絡してくれていたのだろう。少し気まずい感じでこの部屋を後にした俺としては何事もなかったかのように迎え入れてくれるよこーさんの優しさに感謝してしまう。
「みっちゃんが怪我とかしていないなら大丈夫・・・って、手首のところちょっと赤くなってない！？」
どうしたの！？とよこーさんは慌てて俺の手を掬いあげる。
「あ、これは、その・・・」
「・・・渉。念のため炎症とかを防ぐ類の薬があったら北山に頼む」
「分かった。ちょっと救急箱の中を漁ってみるよ」
二人は座ってて、とよこーさんは恐らく救急箱を取りに行ってくれたようだった。自分の視界には赤い筋の入った自分の手首――縄で縛られていた跡。その瞬間に今日の出来事が一気に思い起こされた。宮田に縛られて車に乗せられて、二階堂と千賀には理不尽に触られて、そして玉には――
「北山、玉とは・・・どうなった？」
「えっ、何で・・・」
「ん？」
――何で俺の考えていることが分かったの？
あまりにもタイミングが良すぎて――瞳を丸くして凝視する俺にびっくりしたように、藤ヶ谷も少しだけ目を丸くしている。
「その・・・今度の土曜日に会う約束をした」
御礼のメールを送った後、すぐに玉から誘いの連絡が入っていた。俺もその気持ちに応えるかのようにすぐに“会える”という回答をしてしまった。
「そうか・・・上手くいったようだね」
跡もついてるし、と藤ヶ谷の指先が突然俺の首筋を滑る。自分のつけた跡とは違う玉のつけた跡が残っていることに気がついたのだろう。実際、玉から逃げきれたのは藤ヶ谷の付けてくれた跡であることは間違いない。
「それで北山、玉とは・・・どうなった？」
「えっ、さっき説明したじゃん。今週の・・・」
そうじゃなくて、と掬いあげた俺の手首に、藤ヶ谷はそっとキスをし、真摯な姿勢で俺を見つめている。
「玉と・・・寝たのか？」
「ええっ！？そんな恥ずかしいことを急に聞かないでくれ！」
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2019年7月25日 1時
