6-2 side:K ページ4
6-2 side:K
「その様子、違うらしい」
ふふっ、と甘い吐息を漏らし、唇を綻ばせる藤ヶ谷――俺を揶揄うのが余程好きなのだろうかと俺は頬を膨らませてしまう。
「できるわけ・・・ないじゃん」
「え？」
「・・・だって・・・キスの先のことなんて・・・知らないから・・・」
「北山・・・」
そっと頭を抱きかかえるようにして引き寄せられると、藤ヶ谷の唇が自分の唇に優しく重なる。さっきおあずけを受けてしまったからなのか、触れられた瞬間に甘い電流が身体を駆け巡るかのようだった。藤ヶ谷の頬に手を添えてキスに応える。
「いろいろ教えて欲しいんでしょ？」
「どうせまた・・・仕事の話だって言うんでしょ？」
「玉と・・・キスはしたんだろ？」
「・・・だったら？」
キスの間にお互いの質問には答えない問いかけを投げかけながら、どんどん深くなっていく口づけに俺は溺れていってもうその渦に呑み込まれたまま戻れないかもしれない、と心のどこかで感じてしまう。
「どっちが・・・上手い？」
「・・・っ・・・んっ！」
不意に唇を強く吸い上げられて、俺は堪らず藤ヶ谷の頬に触れていた手を離し、その肩に縋るように力を入れる。先ほど外での強引なキスといい、今といい――甘やかなキスに俺の思考がどんどん麻痺していってしまうかのようだった。藤ヶ谷は俺と玉が寝ていないことを知ってどう思ったのだろう。キスを交わしているのを知ってどっちが、なんて聞いてくるのだろう。少しは玉に嫉妬でもしてくれているのならいいのに、と心の中に浮かび上がった自分の気持ちに、俺は顔を真っ赤にしてしまう。
――俺、何で、そんなことを・・・？
俺と藤ヶ谷の関係なんて、ただの仕事のパートナーなだけなのに。まるで、ヤキモチを妬いて欲しいだなんて――仕事の成功のために俺とターゲットである玉がキスをしたなんて報告は喜んでいるに違いない。
「・・・北山・・・またタイムアップだ」
「えっ・・・？」
藤ヶ谷はそう言うと俺から手を離し、携帯電話に目をやっている。いつの間にか着信でも入ったのだろうか――いつも満足するまでもらえないから、こんなにも焦がれてしまっているのだろうか。自分でも自分の気持ちがふわふわしてしまっているように思う。
「みっちゃん、顔が赤いよ・・・！？」
「え、えっ！？」
よこーさんが戻ってきたことにハッとした俺は、見られたかも、と恥ずかしさにさらに顔を真っ赤に赤らめてしまった。
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2019年7月25日 1時
