5-12 side:K ページ41
5-12 side:K
想いを伝い合わせてもいなければ、恋人同士でもない――無理矢理俺を手にかけようとしたのに、“結ばれた”という表現を使う玉に戸惑いは隠せない。けれど、今はそこに意識を向けている場合ではない。いよいよ核心に迫られて俺は唇を震わせた。
「・・・何で、そんなこと聞くの・・・?」
「・・・抱いた感触が残ってなかったんだ」
その言葉に、俺は自分の鼓動がドクンと高鳴るのを感じてしまった。冷たい汗が、額に滲み始める。身体を繋げていなかったことがばれてしまったら――藤ヶ谷のことだって疑われてしまうかもしれない。どうしよう、と俺はただ強く見つめる玉の視線を逸らせずにただ竦んでしまっていた。
「朝、目覚めたら、ミツはどこにもいなくて・・・俺は天使に触れる夢でも見ていたのかと思った」
「・・・玉・・・」
「無理矢理、手にかけたことは・・・謝るよ」
ごめんね、と玉が俺に圧し掛かるようにして倒れこみ、そっと伸ばされた優しい指先が何度も俺の髪の毛を梳く。出会った瞬間にどうしても触れたくなった、と言葉を続けられて、ミラーボールの光の中、人々の視線を一身に浴びながらも、俺のことを見つめてくれていた玉に、また違う意味で心臓が高鳴っていくのを感じてしまう。そんなにも一心に想われていたことを伝えられたら、これ以上、どんな嘘を重ねれば傷つけずに済むのか――“悪い人”と関りがあるだけなのかもしれないし、本当に“悪い人”なのかもしれないけれど、“悪い人”に見えない玉。俺は一体どうすれば――
「でも、確かに俺はミツに触れたんだよね」
そう言って玉の指が俺の首筋を走りその場所に顔が近づいていく。ビクッと身を震わせた俺は、その場所に残された痕のことを思い出し――ある、決意を固めた。もしかしたら、藤ヶ谷はこうなることを想定して俺に痕を残してくれたのではないだろうか。全て藤ヶ谷の手の上で踊るシナリオであるならば、今はそれに乗っかるしかない。
――玉の心を掴むことが、俺の仕事なのだから。
「・・・た、玉がこのキスマークを俺の身体に残してくれたんだよ。あんなに情熱的な夜だったのに忘れちゃうなんて・・・」
酷いよ、と告げた瞬間に、俺は涙を一筋零してしまった。それは、嘘に嘘を重ねた自分への後悔なのだろうか、それとも玉への懺悔なのか――傷つけたくないからっていう面目で一生懸命自分を守ってしまった。
――優しい嘘も、酷い嘘も、嘘であることは変わりない。
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作者名:ほわわ | 作成日時:2019年5月7日 0時