REAL Touch（藤北・玉北） (ページ5)

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来た道と同じ薄暗い階段を今度は昇っていくと、先ほどの黒服の男達――心なしか緊張した面持ちで先頭を歩く玉に深々とお辞儀をしている。外は暗がりなのに、クラブの中よりもほんのりと明るく感じてしまった。
「さてとどこ行く・・・って、二人とも飲んでるんだっけ？」
「悪いな、玉」
「今、迎えの車を呼ぶから大丈夫。行先だけ決めよ」
　ミツはどこへ行きたい？と携帯電話を取り出した玉が振り返り、俺にニッコリと笑いかけてくれる。けれど、そもそもターゲットである玉にどう接していいのか分からなくて口ごもってしまう。どうする、と口をパクパクと動かして、藤ヶ谷の助け舟を求めるけれども、なぜか薄っすらと笑みを浮かべて微笑んでいるようだった。玉は携帯で車を呼びながらも視線は一向に俺から外そうとしない。俺は焦ってぎこちない笑顔を作った。
「えっと、その・・・玉が行きたいところで」
「おっと、そんなこと言って大丈夫？じゃあ・・・」
　ピッと通話を切る音がしたかと思うと、俺は玉の腕の中に抱き寄せられてしまう。俺の耳にかかっていた髪の毛をかきあげて、耳元に囁きかけてきた。
「・・・ホテル、とかどう？」
「ええっ！？」
「絶対に、気持ちよくさせてあげるから」
　すると、突然玉の歯が俺の耳を甘噛みしてくるので、ビクッと俺は身を震わせてしまう。見つめた玉の表情は酷く妖艶で離れないといけないのに惹きつけられてしまう。ただ自分にとっては未知なる領域なことをされたからか、玉の瞳に映る俺は脅えた眼をしている――
「反応可愛い。思った通りだ」
「な、何を・・・た、玉も、もしかして酔ってる？」
「・・・玉、あんまり北山をからかうな」
　何でも信じちゃうから、と俺の頭を撫でながら子ども扱いする藤ヶ谷にムッとした瞬間――どこかに力が入ったのかお腹が盛大にグーッとなった。そう言えば、アルコールを飲んだだけでまだ何も食べていないんだった。ちょっとだけムーディーだった空気をぶち壊してしまってなんか申し訳ない気持ちになってしまう。
「・・・あ・・・なんかすみません・・・」
「ふっ・・・このタイミングで、北山・・・」
「ふふっ、本当に可愛いなぁ・・・ミツ、お腹が空いているならそう言ってくれればよかったのに」
　美味しいご飯が食べられるところに行こう、とちょうど目の前に停車する高級車――玉が先に後部座席に乗り込む。

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