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1-4 side:K
「・・・行くぞ、北山」
音楽が鳴りやんだ瞬間に、藤ヶ谷がグラスをバーカウンターに返し、ダンスフロアの方へ歩いていくので、俺も同じようにして追いかける。藤ヶ谷はソファー席に投げ出されていたジャケットを拾い上げる。すると、その席へ戻ってきたのは――
「・・・ガヤ、珍しいね。来てたんだ」
「ああ」
久しぶりに一緒に飲まないか、と藤ヶ谷が歩み寄ってくる青年に声をかけた。その青年は先ほどダンスフロアで目を奪われた――藤ヶ谷が渡したベージュのジャケットをサッと羽織る。
「君、名前は?」
「あ、その北山・・・宏光・・・」
じゃあミツって呼ぶね、とニッコリ微笑まれる。
「俺のことは玉って呼んで」
「玉・・・よろしく」
すると、玉が突然俺の顎を掬いあげてきた。びっくりして仰け反りそうになるが、瞬間、横にいた藤ヶ谷と目が合い――俺は踏みとどまった。確かにこんなところで怪しまれるわけにはいかない。
「さっき俺のこと見てたでしょ。ミツの熱視線、感じてたよ。俺がタイプなの?」
「えっ、あ、えっと・・・」
ん?と戸惑う俺の顔を覗き込むように一際近くに迫る柔らかい微笑み。近くで見ると、その色白さとか睫毛の長さとかその整った顔立ちが目に留まり余計に緊張してしまう。
「・・・顔、綺麗だなぁって・・・」
この言葉は嘘ではないから、何かに勘づかれたりはしないだろう。
「・・・えっ、あ、そう?」
ありがと、と玉は微笑み、俺の髪の毛をそっと撫でる。
「ガヤ、可愛い子を見つけたじゃん」
「ああ・・・お前の好みだろ?」
「可愛い・・・?好み・・・?」
俺の頭の上で交わされる会話の意味が分からず、俺は疑問符を抱えたままポカーンとしてしまう。俺から手を離した玉が指先で出口を指し示す。
「じゃあ、場所変えて遊ぼっか」
「ああ・・・北山、行くぞ」
「えっ、う、うん・・・」
玉の背中を追いかけながら、藤ヶ谷に腕を引かれて、そのまま身を委ねるように連れられて店を出る。
『みっちゃん、平たく言うと、悪い人と繋がりがあるかもしれない男をマークして欲しいんだ」
――俺がマークするのは・・・玉。
『先にその男の懐に入り込んでいる相棒と一緒に頼むね』
――そして、俺の相棒は、藤ヶ谷。
こんなことで始まったこの付き合いが――俺の運命を大きく変えることになるなんて。この時はまだ知る由もなかった――
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作者名:ほわわ | 作成日時:2019年5月7日 0時