4-4 side:K ページ27
4-4 side:K
「だから・・・この機会は逃せない」
急に雰囲気の変わった藤ヶ谷が、突然俺を真剣な瞳で見つめてくる。
「北山、俺達に協力してくれ」
「・・・玉は一体何者なの？」
「玉は・・・悪い薬を売買している組織に関わっている可能性が強い」
一員なのかどうかまでは探っている最中だけど、と藤ヶ谷は玉の姿が写し出された写真を俺に見せてくる。写し出されている写真は、美しい天使のような笑顔なのに――どうしてそんなことになってしまっているのだろうか。
「・・・俺も薬を作っている人間として、それが許せなくてね」
だから渉に協力している、という藤ヶ谷の話の理解はできたし、藤ヶ谷の気持ちも痛いくらい伝わってくる――けれど、これ以上怖い目に遭いたくなくて、俺は口を噤んで俯いた。すると、その視界に自分の携帯電話が映る。
「お前の携帯電話は返す・・・」
「あ、ありがと・・・えっ！？」
いやそもそもありがとうじゃないな、と急な申し出に戸惑いながら、差し出された携帯を手にしようとした瞬間、藤ヶ谷が腕を伸ばし携帯を高く掲げてしまう。返せっ！と俺は小さいジャンプを繰り返すも、悔しいことにもうちょっとのところで届かない。
「藤ヶ谷、いい加減に・・・あっ！」
俺は足をもつれさせ、前のめりに倒れてしまう。藤ヶ谷にギュッと掴まると――俺を惑わせた甘い香りをいっぱい吸い込んでしまって、クラクラと眩暈に似た感覚を味わう。
「・・・藤ヶ谷も・・・何か薬を纏ってるの？」
「・・・どうしてそう思う？」
「いい匂いだから・・・」
フフッ、と和んだかのように緩む笑顔を見ると、急に子供のようなあどけなさを感じてしまって、俺はドキッとしてしまう。
「・・・当ててみて」
「あっ・・・」
頬を撫でる掌の心地よさに和み、優し気な瞳と寄せられる唇に身も心も蕩け落ちてしまいそうになる。この唇に触れられたら、きっと申し出に首を振ることはできなくなってしまう。一瞬、自分の手で口を塞いでしまおうと上げた手は――藤ヶ谷と同じように相手の頬に触れさせて、その唇を自分の同じ場所へと導いてしまう。ダメだって分かっているけれど、あの甘い感触が忘れられない。ダメなのに、欲しい。欲しくて、堪らなくなってしまう。
「んぅ・・・！」
――この唇は、まるで甘い毒・・・。
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作者名：ほわわ
| 作成日時：2019年5月7日 0時
