4-3 side:K ページ26
4-3 side:K
「・・・玉はなんでそんなに俺のこと・・・」
「北山のその純粋さが気に入ったのか、本当に踊りながら北山を見初めたのかはちょっと分からないけど」
その言葉に俺はミラーボールの輝く中踊る玉の姿を思い出す。あの時俺がボーっと玉に視線を送っていたから気がつかれてしまったのかと思うと、自分の迂闊さが嫌になるけれど――まさか玉がターゲットだなんて思ってもいなかったから、と心の中でため息を吐いた。
「薬にまどろんでいなかったら・・・間違いなく玉はお前を抱いていただろう」
それが分かっていたから、と藤ヶ谷が俺の髪の毛をそっと撫でる。
「だからお前の傍を離れるわけにはいかなかった」
「・・・っ、藤ヶ谷・・・」
その言葉に、ドクン、と心臓が跳ね上がるのを感じた。
「で、でもさ、だからって俺にあんなことをする必要なかったんじゃないのか？」
薬のご利益待ちをしていたのならば、せめて他の時間稼ぎなんかいくらでもあったはずだ。
「・・・あんなこと、ってどんなこと？」
「いつまでもはぐらかすなよ！・・・その、俺の口に・・・あの、その・・・」
俺はその時の光景を思い出して、顔を真っ赤にして俯いてしまう。口の中に押し込められた行為そのものよりも――見上げた先の藤ヶ谷の扇情的な瞳に今も動悸が治まらない。
「・・・それは、まぁ・・・確かにそこまでする必要はなかったかもしれないな」
フッ、と意味ありげな笑みを零す藤ヶ谷に、俺はちょっと顔をムスッとさせてしまった。
「な、何だよ！その雑な感じ！」
「ただ、あのタイミングで玉の機嫌を損なうわけにもいかなかったからな」
ノリが悪い、とかで部屋を追い出されかねなかった、と藤ヶ谷はポケットから携帯電話を取り出す。
「北山が玉の気を引いてくれたおかげだ」
いろいろ仕掛けもさせてもらった、と自分の携帯電話を見せる藤ヶ谷の姿に、俺は玉の部屋でずっと携帯電話を触っていた藤ヶ谷の姿を思い出す。何を仕掛けたのかなんて分からないけれど、藤ヶ谷はずっと仕事を――玉の正体を探るミッションに取り組んでいたことが分かって、少しだけ胸を撫でおろしている自分に戸惑ってしまう。そんな状況じゃなかったら、もしかしたら俺のことをちゃんと助けてくれたのではないかと――組み敷かれて絶望していたあの時の自分に教えてあげたくなる。そして、自分は何とか藤ヶ谷のおかげで貞操も失わずに済んだみたいだし、と俺は唇を緩ませた。
next→4-4へ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 563人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ほわわ
| 作成日時：2019年5月7日 0時
