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1-2 side:K
「そんなこと言ったって、会ったこともないのにどうやって判断したらいいんだ?」
向こうが俺の顔を知っているということなのだろうか――それはそれでどこかで見張られていたらなんて考えたら怖い。さっきから人が後ろを通るたびに振り返ってしまう。ため息を吐きながらグラスの氷をただぼんやりと見つめてしまう。
『絶対に分かると思うよ・・・名字だけ教えておくね』
「よこーさん・・・俺、不安になってきた・・・」
最近食べたり飲んだりが多く出費が嵩んでいて――俺は同じ大学に通いながらも、自称・探偵業のようなものをしているよこーさんに泣きついた。困り顔をしながらも、ちょうどいい仕事があるよ、とよこーさんに紹介されてここにいるわけだが。
「俺、そういえば、仕事の内容を聞いてないかも・・・」
提示された金額に目を奪われて、二つ返事で勢いよくOKを出してしまったけれど――危ない仕事だったらどうしよう、と今さら身震いしてしまう。
「・・・しかも教えてもらった名字・・・どっかで聞いたことあるような・・・」
すると、コツコツと足音を立てて歩み寄ってくる一人の男――こんなにもうるさいダンスホールなのに、その音に呼ばれているような気がして、俺は顔を上げて振り向いた。少し色黒で色香の漂う男――近づかれただけで甘い香りがフワッと漂い、飲んでいたお酒よりもその匂いに酔ってしまいそうになる。いつまでも俺を捉える芳香が離れないと思い、俺は慌てて顔を上げた。その男はいつの間にか俺の隣に立ち、同じようにして女性の店員さんに同じものを注文している。
「・・・っ・・・」
突然差し出されるロックグラス――戸惑いながら俺はそのグラスに自分のグラスを重ねた。カチン、という乾杯の音がして、氷がカラカラ震える。
「あ・・・」
目の前の男のグラスが自分の視界に映るようにして差し出される。驚いてその男を見つめると、ただ静かに口元を緩ませて真剣な瞳で俺を見つめている。俺はその表情に引き寄せられるまま自分も同じようにグラスを向けた。肘を絡め、互いの口元にグラスを持っていく。ゴクゴク、と音を立てて流れていく液体――俺の瞳は同じように飲み干す男に奪われてしまっていた。
「・・・北山」
『名前を呼ばれたら、その名字を呼び返してあげて?』
「・・・藤ヶ谷?」
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作者名:ほわわ | 作成日時:2019年5月7日 0時