先輩は教祖らしい 壱 【童磨】

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大丈夫、そうは言ったものの、まだわたしの体は重いし火照っている


倒れる前のように足が鉛みたいに重たい


一歩一歩がゆっくりになってしまうから、自然に善逸に体を委ねてしまう


隣で肩を組んで私の歩調に合わせてくれる善逸



「俺さ、春にぃから聞いてた。お前の母ちゃんがそろそろ帰ってくるだろうって。やっぱりその通りだった」



春にぃの話をもっと真剣に聞いて信じてたらこうならなかったのに、善逸はボソッと言った


ばかだな、こんな近いんだから聞こえちゃうよ



「なにもできなくてごめん」

『別にそんなこと気にしないよ、平気』



私に直接言ってくれないお兄ちゃんが悪いんだから


直接連絡寄越してくれたらいいのに。やっぱりお兄ちゃんはもうお兄ちゃんじゃないんだ



「昨日、なに言われたんだよ」

『ん？なんにも言われてないよ？』




嘘だった。何も言われてないわけじゃない


ただこうして何度も私が傷つくたびに、善逸が自分を責めてしまうのがもう嫌なだけ



「嘘つくなよ、お前いい加減、俺に頼れよ…」

『頼ってるよ、こうして何度も何度も…』



カバン持たせて、奢らせて、私のこと心配してくれてそれに甘えてしまう


充分すぎるくらいに頼ってると思う



『ん、今開ける』



家への道のりは、本当にすごく短い


でも今日は途方もなく長く感じた


玄関の鍵を開けると、我が家のように家に上がっていく善逸


そのままリビングや至るところを見て回る


私はそんな善逸を傍目にゆっくりと自室に向かった



「もう、いないみたいだな」

『うん』



ベッドに横になると善逸は私に布団をかけた



「なんか食べたいもの…」

『ないよ』

「そっか、じゃあ俺ッ」



急にぎこちなくなって帰ろうとする善逸の手を引き留める


嫌々ながら風紀委員やって、いつもはか弱い女の子みたいにナヨナヨしてるくせに。


手首はガッチリ固くて、善逸も男の子なんだって。




「なん、だよ…」

『ねえ、善逸。私分かってる。好きになることは罪深いことだし、愛されることって怖い。怖いの私。いいのかな？私、幸せになろうとしてもいいのかな？』



善逸はわかった。Aが誰のことを思い浮かべているのか。


Aの考える相手は俺じゃない。俺ではないんだ




「いいんだよ。お前はたくさん苦労してきた。今度はお前が幸せになる番だ」



掴まれてない方の拳をギュッと握りしめた。

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