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その後彼女は、現場にいた別の誰かが呼んでくれた救急車で病院に搬送された。幸い命に別状はなくて数箇所の骨折と打撲で済んだ。ただ、頭を強くぶつけたらしく、後遺症が残ったり記憶の1部、もしくは全てを失ったりしている可能性があると担当の医師から説明された。
そして、事故から数週間経った今も彼女はまだ眠り続けている。
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家の玄関を開けばいろはとぽてとが出迎えてくれた。
2匹とも最近見かけないAが心配なのか、Aの部屋の前で鳴いてみたり、ドアを引っ掻いてみたりして彼女が出てこないことがわかれば僕のところに戻ってきてドアを開けてと催促してきたりする。
いろはとぽてとの言う通りにドアを開けてあげると部屋の中にAがいないことを確認して少し寂しそうにする。そんな2匹を見て胸が痛くなる。
「ねぇ、A。早く目を覚ましてよ。いろはとぽてとも寂しがってる。何より僕が寂しいよ。Aの声が聞きたい。僕の名前を呼んで欲しい。君の笑顔が見たい。......話がしたい」
誰にも聞かれることのない思いをひとり、寝室で吐き出した。どうかこの思いが届きますように。明日こそ彼女が目覚めていますように。
いつの間にか溜まっていた涙が一筋、頬を伝ったけれど、それを拭うこともせずに布団に潜ってそのまはま眠りについた。
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作者名:作者一同 | 作成日時:2019年10月6日 10時