【歌い手】それぞれのLastPhrase Ver,B【大型コラボ】 (ページ26)

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「今日も目覚めない......」

病室のベッドの上で眠る彼女は、この数週間ずっと綺麗な瞳を閉ざしている。彼女の側には一定の間隔で無機質な音を鳴らす機械が置かれていて、その音だけが唯一、彼女がまだ生きていると証明してくれている。

病室に響く無機質な音を聞いて安心する日々が続いている。彼女はまだ生きてる。きっとまた笑い合える日が来るんだと。

今日あったことを話しながら時間を確認すれば、面会時間がもう終わろうとしていた。

「A、今日はもう帰るね。また明日来るから」

明日こそ目覚めますように。そう願いながら、彼女の頭を撫でて病室を出た。

*****

受付の人に頭を下げて病院を出ると雨が降り始めていた。あぁ、数週間前のあの日もこんな天気だったな。なんて、彼女が目覚めなくなった原因を思い出した。

そう、あの日も......。彼女が事故にあったのもちょうど今日みたいな天気だった。

珍しく僕とAの予定がない日が被ったから、どこかに出かけようって彼女の提案で、雨の中、家の近くを歩いてまわった帰り道のことだった。

もし明日世界が終わるなら、なんて何気無い話題で会話をしながら歩く。横断歩道に差し掛かった時、見知らぬ誰かの悲鳴が聞こえたと同時に突き飛ばされた。そのすぐ後に目の前を1台の車が通過した。

一瞬何が起きたのか理解できなかった。

目の前に倒れている彼女の姿を見て冷静になんてなれなくて、救急車を呼ぶなんてこと頭から抜け落ちていた。倒れた彼女を抱き起こして名前を呼び続けることしかできなかった。