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八月十五日。
午前十二時。

あの、高三の夏を何度繰り返しただろうか。
Aが死ぬ光景を目の前で何度も見てきた。
死んだ後のAを、死ぬ前のAを、死ぬその瞬間までのAを、落ちて行くAを。

何度も何度も夢に見た。

あの高三の夏を繰り返して、そうしてそのまま俺は大人になって。
あれから五年は経った。

もう、昔のままの俺じゃない。

炎天下の中、願った。
もう一度だけAに会わせて、そうして俺が救ってみせるから、と。

五年前の夏の温度に手を伸ばしていただけの俺は、もうここには居ない。

高校の屋上。
あの日を繰り替えす俺と、Aの姿が見える。


あれから丁度五年と言うこの日に、偶然Aが死んで、それを俺が見ている世界線が繋がったのだ。

Aはそんな俺に気が付いて夏が寂しく過ぎ去るかのような笑顔でこちらを見つめる。


「死んじゃった、ごめんね。ホントのサヨナラ、しようか」


そんな、寂しいこと。
悲しいこと。
苦しいこと。
辛いこと。
そんなこと。

言うんじゃない。
逝くんじゃない。

Aの命はあの場面で散っていい命ではなかった。
誰かが仕組んだ悪夢の物語によって殺されただけの命なのだから。


「じゃあ、最期に話そうや?それぐらい許されるやろ?」

「…うん。私も、坂田と最期に話したいな」


目にいっぱいの涙を溜めて、そうして不器用な笑顔を作る。
その笑顔も嘘なんやろ?と心の中で問いかける。


「俺な、やっと分かってん。Aは死ぬはずやないって」

「なんで?私が死なないと、家族みんな死んじゃうんだよ」

「何やねんそれ。そんなん俺が覆したるわ。お前に絶対生き続けること後悔させへんし」

「……もういいや。じゃあね。バイバイ、坂田」


そうして、フェンスの向こうに居る彼女は笑って空中に身を投げた。
馬鹿馬鹿しい。
俺がこうして助けに来たのに。
笑顔にさせに、幸せにさせるために来たのに。

好きだ、と伝えるために来たのに。


「誰が死なせるかアホッ!」


大声で叫び、彼女が落ちようとしたその瞬間には走り出していたのだ。
そうして、彼女の腕を掴み引き寄せる。

瞳を大きく見開いて驚く彼女の顔が面白くって仕方が無い。
もう、この十二時と言う時間を過ぎたら彼女が自ら命を投げ打つことはない。


「A、一回だけ言うから聞いとけや。あの日からずっと後悔しとってん。ずっと言えばよかった、って」



───A、友達なんてやめよう。大好きや!


満面の笑みを向けて。

この物語の最後の言葉を。

★【センラ】空と一緒に泣いてしまえばいい。/nana→←***



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作者名:作者一同 | 作成日時:2019年10月6日 10時

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