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「今度の週末、お時間頂けますか」


そんなメールが来たのは、あの日から数週間後で。
相談に乗るつもりで海岸に向かった俺の前に現れた彼女は__あの日よりもずっとすっきりとした表情だった。


「ごめんなさい、今日は....悩みも、辛いこともないんです。ただ、お願いがあって」

「お願い?」

「あの時引き止めてもらって、黙って私の話を聞いてくれたのが嬉しくて。貴方とは無言でもなんだか落ち着けて、だから....その....私と、お友達になってくれませんか?」


驚きながらも頷いた俺を見て「ありがとう」って笑った彼女のその笑顔に、確かに心を奪われたのを覚えてる。

それから沢山話をした。そこで初めて自己紹介をして、彼女の名前がAという事やひとつ年下だった事、彼女は思ったよりも近くに住んでいる事なんかを知った。
その後も何度か同じ様に休みの日に海岸で会って、他愛ない話をしたりお互い相談に乗ったりした。次第に話す時間も増えたけど、それ以外ではメールも電話もしない....本当に『ただここで会って話すだけ』の友達だった。

そんな何とも言い難い関係性が変わったのは12月。その年のクリスマスに俺はAをデートに誘った。
所謂ホワイトクリスマスになって、寒い中イルミネーションを見に行って。


「....手、繋いでいい?」


そうやって差し出した手に「こちらこそ」って緊張したみたいな声で返したAに、俺の気持ちを伝えて。その次の年には同じ場所でプロポーズもした。
俺の渡した指輪を着けて「夢みたい」って泣いた彼女の頬を伝ったその雫は、宝石みたいにすごく綺麗だった。


そうして俺たちの関係性が「友達」から「恋人」、そして「夫婦」へと変わって、2人での生活が始まって。この海からは少し距離のある場所に住み始めた。それでも何度かあの海には行ったけれど....確か、8月の末くらい。夏休みも終わる頃だし人も少なくなったと思うから暑いうちに海見に行こう、いつも季節外れだし。なんて笑ったAが、俺にこう言ったんだっけ。


「あのね、赤ちゃん出来たかもしれないんだ」


元々子供を欲しがっていたA。俺自身も子供は好きだったし、自分の子供が出来たと思うと嬉しかった。その話の数日後に二人で病院に行って、妊娠が確実なものだと分かった時はすごく感動したっけ。




***→←★【志麻】It is no use crying over spilt frozen petals. /らぱん( ・×・ )



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作者名:作者一同 | 作成日時:2019年10月5日 5時

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