小さな指先 ページ2
ふにゃりと柔らかな感覚が、指を握った。
自分の人差し指をその小さな指で平で握るのがとても可愛い。
余った指で頬を撫でればそれももちもちとした感触がした。
「可愛いだろ?そして、僕にそっくりだ!」
自慢げに笑った弟の頬を痛く無い程度に摘んで押す。自分よりも高くなってしまった弟の頬を触るのも意外と大変だ。
「あの…なに?姉さん…」
「いや、もちもちしてるかな…と、」
「してるわけないよね⁉」
パッと手を離してまた小さな赤ん坊に向きなおる。幸せそうに微笑んで眠る姿は本当に可愛かった。
「いいね、子供。もちもちしてて可愛いし、育てるのは大変だけど、それでまた成長できる」
起こさないようソッと抱き上げ、幸せを抱きしめるように優しく背中を撫でた。
「それなら子供作れば?」
と、誰かが爆弾発言。その発言をしたのは弟の友人であった。
「そう簡単に作れるもんじゃない。それに作る相手もいない」
ふてくされたように彼女は良いと子供をベッドの上に戻して近くにあった椅子に腰掛ける。
「え?姉さん彼氏もいないの⁈」
「いない」即答。
「え、本当に?てっきりあの人かと」
「あの人って?ジェームズ、」
「リーチェだってわかってんだろ?」
「シリウスは黙ってて」
Aは自分のすぐ後ろに来た額に一発デコピンを食らわせる。
シリウスは小さく唸り声をあげて片手でひたいを抑えた。
「え?ほら、あの人だよ。アル、アル、アルベー、」
「アルベール・レグイン」シリウスがこんがらがったジェームズの代わりにそう答える。
リーチェはぽかんと一瞬反応した後火がつくように赤くなった。
「ばっ、馬鹿じゃない⁈からかわないでよ!」
椅子から飛ぶように立ち上がると数歩下がってなぜか身構えた。
「あははっ、ごめん、ごめん!」
ジェームズは面白そうに笑う反面、シリウスは自分が望む反応が見られなかったか何かで気に食わずそっぽを向いてしまった。
「…姉さん。いっつも思うんだけどさ、リリーの服あげるよ?」
ジェームズがリーチェを見ながらそう言った。
「いい。大丈夫」
「でも姉さん”スカート一着しか”」
「一着も持ってません!」
そう断言するがジェームズは知っているアルなんとかさんにもらったスカートがある、と。
「もう!私帰る!!仕事行く!」
すっかり拗ねたご様子だ。
「姉さん帰るの?」
と、ジェームズがそう言う。
「夕方にはまたくるから!じゃあね!」
階段を降りてリリーに挨拶をする声が聞こえた。
第1章 約束事
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作者名:ノア | 作成日時:2017年8月17日 11時