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うん、と彼は大きくうなずいた。ばっちりだよ、さっきまでびっくりして動けなかったんだけど……照れくさそうに頭を掻きながら続ける。

「それで、その子は?」

 きょとん、とした様子で彼は問う。
 どうすべきか、とネロは逡巡した。この子は手元に置いておきたい、と思ったが、それをどう主張すれば怪しくないか。
 場繋ぎに「ああ――」と笑顔を貼り付けながら言うと、「分かった!」とリュカがぽんと手をたたいた。

「侯爵家の子だね! なんだか逃げられちゃったみたいで、それを僕はさがしてたんだった。協力してくれてありがとう、ネロ君」

 にこ、とまたリュカは笑った。そして、ネロの後ろへ隠れていた少女に向けて手を広げる。「怖くないよー」と、説得力のある声で呼びかけた。
 行かなくていい、と手で制したつもりだったが――するり、と少女はその隙間を抜けて、リュカのもとへ歩み寄った。

「いい子だねえ。大丈夫だよ、悪いようにはしないから。――あ、ネロ君。ついでに一つ、お願い事していいかな?」
「……なんだ?」

 目を細めてネロは聞いた。それをまねるように、リュカも目を細める。真っ白な睫毛が、白い肌に影を落とした。

「なんかね、逃げ遅れちゃった子がもう一人いるらしいんだ。……もし暇だったら、手伝ってくれないかな?」
「ああ。巡回ついでだ。探しといてやるよ」

 そうネロが返すと、ありがとう、と満面の笑みでリュカは言った。そのまま、少女の手を握る。
 君には渡さないよ。
どうしてか、ネロにはそう言っているように見えた。
 が、これ以上深追いしてもいいことはあるまい。本能的に感じたネロは、くるりと踵を返して駆け出す。
 一歩目が着地したところで耳鳴り、そのまま彼はスピードを上げる。八、九、十歩。静寂が訪れ、ちょうどネロが止まったところで「彼」の声が聞こえた。

「『――ロ。ネロ。とりあえずこっちは半分まで来た。そっちの進捗は?』」
「ああ。相変わらず屋敷の中は混乱中だ。ただ吹雪が不安定になってきた。そろそろ落ち着くかもしれない。それよりお前――」

 意味が分からないというように、ネロは神の根元を引っ張りながら虚空、そして――

「行方不明が一人ってのはどういうことだ? ――二人いるはずだぞ、確認不足じゃねえのか?」

 抵抗組織に属する弟に、彼は告いだ。いまも馬車を走らせる、ルカ・リエースに。

無駄な物には蓋をして→←従騎士ネロ



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紫清(プロフ) - 嵩画さん» 温かいお言葉ありがとうございます! 読んで下さる方がいるということが何よりの励みになりますので、今後ともよろしくお願い致します。 (2020年3月16日 18時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
嵩画(プロフ) - 毎回更新される度にわくわくしながら読ませて頂いております…今後の展開が非常に楽しみです。お忙しい時期だとは思いますが、頑張って下さい。 (2020年3月16日 17時) (レス) id: 34e937d538 (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - ももせさん» ありがとうございます! 長くなりそうですが、お付き合い頂ければ幸いです。 (2019年9月26日 0時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
ももせ - 小説版すごく楽しみにしていました!今後の展開が気になる…更新楽しみにしてます!! (2019年9月23日 23時) (レス) id: a031215c05 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫清 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年9月23日 23時

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