鳳仙 ページ2
*
「あっ、A様よ!」
「今日も一段と素敵!」
「女の私でも見惚れちゃうわ...!」
まだ客が入る前の遊廓は、女郎の雑談で賑わう。
Aが、彼女たちの横を通る度に上がる黄色い歓声。
Aへの尊敬の年が込められている。
向日葵「A様、一体どこへ向かっているのですか?」
付き添いの向日葵がコテ、と首を傾げる。
Aはゆっくりと振り向き、意地悪気に口角を上げた。
A「鳳仙様のところよ。」
向日葵「えぇっ!鳳仙様...。」
向日葵はあからさまに嫌そうな顔をし、ギュッとAの着物の裾を掴んだ。
A「あら、どうしたの?」
向日葵「だって...鳳仙様は怖いもの...。」
向日葵がそう言うのも無理はない。
鳳仙とはこの吉原を支配する男である。
夜兎と言われる宇宙最強の戦闘民族であり、宇宙海賊の春雨の創設者とも聞いた。
その鳳仙に呼び出されるとは何事だ、という不安と焦燥を感じながらも、向日葵の前ではAは至って平常を保った。
着物の下で汗が、つっと流れる。
鳳仙は気に入らない者は、女であろうと構わず殺してしまう。
何か粗相をしてしまっただろうか。
それとも花魁である私を抱きに...?
...いや、まさか。
鳳仙が恋焦がれているのは日輪だ。
私にはわかる。
日輪の脚の健を切って部屋につなぎとめ、この吉原から逃げ出せないようにさせる。
愛と憎しみは裏腹だ。
Aはふっと呆れ笑い、ぴたり、と豪華な装飾を施された部屋の前で立ち止まった。
A「着いたわよ、向日葵。」
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作者名:哀歌 | 作成日時:2018年6月19日 20時