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雨が上がれば。【山田二郎】 ページ34

卒業式当日の今日。
外では、朝から雨が降り続いていて。
『...二郎とも、今日でお別れだね。ちょっと寂しいな。』
「俺は全然寂しくなんかねぇぞ。」
___またやってしまった。
好きな子の前で悪態をついてしまう癖は三年経っても直らない。
俺が悪態をついた後に、Aが少しだけ寂しそうな顔をするのも、変わらない。
月日が流れても、俺達の関係は変わらないままだ。
『そうだよね。私とお別れするのなんて、二郎には何でもないことだもんね。』
辛そうな顔で呟くA。
違う、そうじゃないんだ。俺は、お前のことが、
「あぁ、そうだよ。」
口から出る言葉は、思っていることと正反対で。
何で俺は素直になれないんだろう。今日が最後のチャンスなのに。
ふと、ポタポタと雫が降っていることに気付く。
『ごめん。私、急にっ、』
今まで俺がどれだけ酷い事を言っても、冷たい態度をとっても笑っていたAが、泣いていた。
泣かせたかった訳じゃないんだ。本当はただ。
『ごめんっ、私、ちょっと外行くね、』
目元を抑えたまま、教室を飛び出すA。
何故だかわからないけど、今ここで追いかけなくちゃいけない気がして。
考えるよりも先に、体が動いた。
「Aっ!」
気が付くと、彼女を抱きしめていた。
「...違うんだ、全部。」
『えっ、?』
痛々しいほど真っ赤な目で、不思議そうに俺を見上げる。
「...っ、」
___何で肝心なところで声が出ないんだよ。
もう、これ以上傷付けたくないんだよ。
なぁ、俺は、
「俺はっ!」
『じ、二郎?』
いきなり大声を出した俺にびっくりしたのか、パチパチと瞬きをしている。
「俺は、Aが好きだ!」
やっと言えた、思っていることを。
三年間、言いたくても言えなかった、本当の気持ちを。
「ずっと酷いことばっかり言ってごめん。冷たい態度ばっかりとってごめん。
 ___泣かせて、ごめん。」
一度本音が出てくると、するりと魔法のように言葉に出来る。
そうか。俺に足りないものは、本音を口にする為の勇気だったんだ。
『私、やっと二郎の本当の気持ち、聞けた気がする。』
「...そうかよ。」
『私もね、二郎のことが好き。』
やっと両思いになれたことが嬉しくて、暫く泣き続けた。
ようやく泣き止んだ後、
「これからも宜しくな。A。」
『こちらこそ宜しくね。二郎。』
まだぎこちなさの残る距離感で、笑い合った。
気が付いたら朝から降り続いていた雨は上がっていて、雲間からは綺麗な虹が顔を覗かせていた。

何よりも綺麗な。【山田三郎】→←いつも隣に。【山田一郎】


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月川利乃(プロフ) - 真琴さん» ありがとうございます(´;ω;`)そんな風に思っていただけるなんて、本当に嬉しいです。まだまだ未熟者ですが、頑張っていきます! (2019年3月19日 20時) (レス) id: 8515e66b17 (このIDを非表示/違反報告)
真琴 - 完結おめでとうございます!とても大好きな作品です。続編も楽しく読ませていただいてます。これからも頑張って下さい! (2019年3月15日 0時) (レス) id: 5e6ad04f41 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» それとお知らせなのですが、こちらのお話の方が話数上限に達してしまい、続編を作成致しましたので、リクエストはそちらの方にお願いいたします_(._.)_いつでもお待ちしております! (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» 喜んでいただけたのなら幸いです!ホワイトデーネタ、実はうっかり今日投稿しそうになって焦りました(^_^;)明日は間違えないようにしっかり投稿します( ´∀`)b (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)
月川利乃(プロフ) - 月華姫さん» こちらこそ、リクエストありがとうございました!筋肉本ってどんなのかな、なんて呑気に調べたら、とてつもない世界が広がっていて驚きました(笑)とりあえず誰かを脱がせようと思って抜擢されたのが左馬刻様と先生です。 (2019年3月13日 1時) (レス) id: ed7493f8a7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月川利乃 | 作成日時:2019年2月22日 22時

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