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4,目覚め ページ6

黒木side


「黒木、おい黒木!」


誰かのか声で目が覚める。
目を開けると、自己主張の強そうな男子が俺の顔を覗き込んだ。
誰だか分からないが、俺の事を知っているらしい。


「美門、こいつ起きたんじゃないか?」


もう1つ、顔が視界に入ってくる。
サラサラの髪、女子と間違えそうな位整った顔。
だが、この顔にも見覚えがなかった。
医師が入ってくる。


「黒木君!目が覚めたんだね。どこか痛い所は無いかい?」


「黒木…それが俺の名前ですか?」


ぼんやりとした頭で聞き返す。


「え…」


「マジか…」


周りに居る男子達が驚きの声を上げる。
でも、医師だけは冷静だった。


「そうだよ、黒木君。自分の下の名前、分かる?」


「黒木…」


俺は暫く考えていた。


(自分は…誰だ?)


「…わかりません。」


「そうか、では次の質問だ。2×7は?」


「14。」


「そうだね。じゃあ江戸幕府を開いたのは?」


「徳川家康。」


「うん。30°、60°、90°の三角形の長さの比は?」


「1;2;…」


「わからないかい?」


「はい。」


そう答えると、周りで息を呑む気配がした。


「では、最後の質問だ。竹取物語の最初の2文を原文で。」


「竹取物語…」


わからない。思い出せない。


「わからないかい?」


「はい。すみません。」


「いや、謝らなくていいよ。」


医師は何か考えるような素振りを見せた。


「黒木君。君の名前は貴和だ。」


「はあ…」


「今ここに居る子達は君の友達だ。覚えているかい?」


(友達か…。)


自分を覗き込む顔には、誰一人として見覚えは無かった。
ただ、なんとなく物足りないような気がした。


「覚えていません。でも…」


「でも?」


「誰か今居ないけれどもっと他に…大事な人が…」


「居たような気がするんだね?」


「はい。」


「その人の名前は?」


「…わかりません。」


「そうか…。ありがとう。ゆっくりしていなさい。それからちょっと…」


そう言って俺を取り巻く男子達を外に連れ出した。

5,黒木の存在→←3,俺の名前



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匿名 - 他の作品も是非でして下さい! (2020年3月26日 13時) (レス) id: 668208e396 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とっっっっっても面白かったです! (2020年3月26日 13時) (レス) id: 668208e396 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 - 続きが気になります〜 (2019年4月5日 11時) (レス) id: 10ed114a72 (このIDを非表示/違反報告)
S2R花水木 - 作者です。そう言って戴き、幸いです!リア友にも伝えておきますね! (2019年4月5日 9時) (レス) id: 79c3ee969c (このIDを非表示/違反報告)
青龍 - すごく面白いです!更新頑張ってください! (2019年4月5日 8時) (レス) id: cfbc004beb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:S2R花水木 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年4月4日 12時

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