福沢さんの猫好きが無邪気すぎるんだが？ と思った今日この頃。

始動するのは。 ページ7

それから──順調に時が流れ。



ルイーザちゃんの話題がうずまきにて出たり、ポオ君が探偵社に来て推理小説という名の実際の事件を持ち込んで来たりと。ここいらのことは全く記憶にはないものの、恐らく原作との関わりがあるだろうということが幾つか起こった。

しかしまぁ、肝心の共喰い編はまだやってこないらしく。ここしばらくずっと気を張っていたのだが、まぁ気を長くして待つしかないかと考えて、本日も『おはよう御座います』と出社した。




「────凪、」




無数の視線が私に収束した。

あ、と意味のない母音が唇から漏れた。この視線と事務所の雰囲気はどう考えてもただ事ではなかった。事務員さん達が迷うような目で目配せをしていて、その中で国木田さんがひとり、息を吐いた。



少し、こっちに来い。



そう云われたなら、私は唇を噛み締めたまま、それに応じる他はなかった──そうだろう。他に、どうすることもできないだろう。

強く握り締めた拳に爪が食い込んだ。痛みを感じた処で見れば、爪の痕が手の平に残っていた。それを数秒見てから、顔を上げて国木田さんの背中を追った。




『──』




共喰い編、始動だ。












「社長が襲撃された。今敦にも連絡をしている……、命こそ大丈夫だが謎の症状で意識不明だ。与謝野女医すら治せん」



予想通りの国木田さんの言葉に、そうですか、と心此処にあらずといった様子で相槌を打った。やはり起こった。そりゃあ起こらなければどうなるんだという話ではあるが、漫画やアニメの描写を見ていたら物凄い苦しそうだったではないか。
……いや、今更罪悪感など覚えてどうする。全く意味がないし、そんな無駄なことを考えるよりは次の行動を考えた方が断然マシである。


国木田さんが「襲撃者に心当たりはないか」と訊いてきたので、恐らくと前置きして異能者連続襲撃事件のことを話す。聞けば聞く程、彼の表情がどんどんと険しくなっていった。



「太宰が今訊き込みにいっているが──慥かに、そんな存在があるならそれの可能性が高いな」



気難し気に顎に手を当てている国木田さんから視線を外した。ドタドタという明らかに慌てている音が、部屋の外から聞こえたからだ。

そして案の定というべきか、バンッと扉を開けた人物──敦君が慌てた表情で、




「社長が襲われたって本当ですか！？」




と、まさに今話していたことをそのまま表すように叫んだ。

分からない問題はそもそも答えるべからず→←もうちょっと日本語で対話しよう

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す