悪いのは…? ページ20
話してください、と食い下がる私たちに暫く渋っていた沙希先生だったけど、そうよね…と一言呟いた。
そして、責めるような悲しそうな口調で、私たちに問いかける。
《…ねぇ、貴和君。翼君は、無事?》
えっ…?
無事じゃないことは、沙希先生も薄々気づいていたようだった。
《下校する姿を見てないわ。それに、話の内容は谷君に関することだったの…貴和君たちは知ってるわよね?谷君のこと…》
「はい…」
電話を握りながら、小さく呟く貴兄。認めたくはなかったけど、確信に変わった。
谷先輩と翼が、何らかの関わりを持ったということに。
震える声で保健室での話の内容を伝えてくれた沙希先生は、何度も謝ってくれた。
《森永さんのアフターケアのことばっかり考えてて…翼君の安全を、考慮できなかった。ごめんなさい…》
《翼君がどこにいるかは分からないわ…本当にごめんなさい。》
確かに翼の安全を最後まで考えなかったのは沙希先生だけど、今の話を聞く限り、翼は森永さんのことを助けようと動いたんだ。
きっと、調査しようとしたんだと思う。
そこで、うっかり谷先輩と鉢合わせしたのかもしれない。
沙希先生は何も悪くない。
もちろん、翼も。
だって、それぞれ人のために動いたんだもの。
責任があるというなら、私の“姉”としての力不足…
「教えてくれて、ありがとうございます…」
谷先輩がいたという森永さんの目撃情報の場所に行くしかない。だって、翼がどこにいるか分からないのに闇雲に探したって、意味がないから。
お礼を言って切ろうとした貴兄に静止をかけたのは、沙希先生だった。
《ねぇ…谷君の家庭事情、知ってるかしら?》
家庭事情…?
怪訝な顔をするお兄ちゃんたちを見る限り、誰も知らないんだと思う。
そんな私たちの様子を察したのか、沙希先生がポツリと話し始めた。
《谷君の暴力事件が分かって、家庭が決裂したらしいの…》
決裂!?
《前から少し家では暴力的だったみたいでね…警察に行ってくれて良かった、って安堵する妹さんとお母さんと、谷君の推薦を消されて激怒したお父さん。離婚したそうよ…
…暴力事件を起こした谷君は許されないわ。決してね。》
語尾に力を込める沙希先生は、でも、と口調を和らげた。
《自分のせいで家庭を崩壊させたかも。谷君も辛かったんじゃないかしら…》
そんな裏事情があったなんて…
驚きを隠せない私たちに、沙希先生は更に続けた。
《怒りの矛先が、自分の行動じゃなくて貴方たち生徒会に向いたのよ、きっと。》
私たちは何も言えず、俯くしかなかった。
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未麗 - 更新頑張って下さい‼ (2022年3月27日 14時) (レス) @page22 id: 1aa17b468f (このIDを非表示/違反報告)
ねねね - 面白いですね!更新まってます! (2020年3月9日 16時) (レス) id: 65314d53ab (このIDを非表示/違反報告)
みずは翼(プロフ) - アル@Project KZさん» 見てくれたんですね…嬉しいです!!ありがとうございます♪ (2019年8月22日 22時) (レス) id: 9487e9fcb1 (このIDを非表示/違反報告)
アル@Project KZ - 面白かったです! (2019年8月22日 20時) (レス) id: c93556c612 (このIDを非表示/違反報告)
みずは翼(プロフ) - とうしろうさん» 短くて大丈夫ですよ〜!更新頑張りますね!ありがとうございます! (2019年7月31日 16時) (レス) id: 9487e9fcb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みずは翼 | 作者ホームページ:http://mizuha.uranai@tututu
作成日時:2018年9月7日 23時