396話 ページ50
確証を得るために、変装して望月とすれ違い、その瞬間に財布を抜き取り、保険証を確認。
…やはり、高卒で大倉商会に就職している。
望月を走って追いかけ、声をかける。
『すみません、財布落とされましたよ』
「ああ、ありがとう」
変装、というか男装をしていたから、まったく気づかれなかった。
しかし、私だけではここで手詰まりだ。
あの家や家具、それにあの目から、何かあることは確かなのに。
せめて、黒木くんと上杉が協力してくれれば…。
その翌日、上杉からメールが来た。
[急用がある。授業前に3階の非常階段に集合]
それだけのメールだが、ただ事ではない予感がした。
秀明に着くとまっ先に、非常階段に向かった。
上杉が立花さんを連れてきたときには、全員が集まっていた。
「もう授業が始まるよ」
小塚くんは困ったような声だった。
「急用ってなんだ」
若武くんが聞くと、上杉は、荒くなっていた息を静めようとして、何度か深呼吸をした。
「いいか、よく聞けよ」
力をこめて、私たちを見まわす。
「うちの親は、2人とも医者だって前に言ったよな。それぞれに個人医院を経営している。親父は上杉医院、おふくろは結婚前の名前をそのまま使っていて松本クリニックだ」
いつも冷ややかな感じのするその目の中には、熱っぽいきらめきがあった。
「ここに来る前、ちょっとした届けものがあっておふくろのクリニックによったら、患者の出入りする玄関から、望月さんが出てきたんだ」
若武くんは、なんだといったように眉を上げた。
「つまらんことで大げさに騒ぐなよ。別にいいじゃん。望月さんだって、風邪くらい引くだろ」
言い捨てて若武くんは身をひるがえし、教室に戻っていこうとした。
私はその肩をワシづかみにする。
『上杉がそんなことだけで騒いだりしないわ。最後まで聞きましょう。続けて』
上杉はうなずき、話を続ける。
「クリニックから出てきた時、望月さんは制服を着ていたんだ。胸には、大倉商会っていう会社名が人っていた。そして駐車場に停めてあった大倉商会の車で帰っていったんだ」
黒木くんが口を開く。
「大倉商会は、システムインテグレーションの大手だ。オフィスで使うコンピュータや通信機器、ソフトウェアを販売したり、維持管理のサポートをする会社だよ。秀明のパソコン類も、大倉商会が納めてると思ったな」
その場の全員が真剣な表情になった。
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mio - 返信ありがとうございます!あまり無理をしないでガンバってください!! (2020年3月16日 14時) (レス) id: 2668335830 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - mioさん» コメントありがとうございます!更新はもうしばしお待ちください。お話は出来てるのですが、打つのが中々…。それでも、皆さんに少しでも早くお届けするため、がんばっております。これからもよろしくお願いします! (2020年3月14日 14時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
mio - 更新頑張ってください!応援しています!! (2020年3月14日 14時) (レス) id: 2668335830 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 忍大好きマンNさん» コメントありがとうございます!皆様の応援を糧に、精一杯がんばっていきます。これからも読んでいってください。 (2020年3月11日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ももりんごさん» コメントありがとうございます!返信遅くなり申し訳ありません。そこまで言っていただき、本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いしますね♪ (2020年3月11日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年2月21日 13時