384話 ページ38
若武くんは、その目に、いじの悪い感じのする光をまたたかせた。
「おい、上杉。さっきからなんのかんのって理由をつけてっけど、結局おまえ、ただ行きたくないだけなんだろ」
上杉は、かすかに笑って、ゆっくりと立ちあがった。
「なぐってほしいんだったら、素直にそう言えよ」
若武くんも、いすをけって立った。
「それは、こっちのセリフだ」
すぐそばでにらみ合う2人は、手を伸ばしてお互いの服をつかんだ。
拳を握った瞬間に、2人の頭をつかみ力を入れる。
「いだだだだだだっ!」
「潰れる潰れるっ!」
2人が涙目になったところで、手を離した。
『そんな理由でなぐり合うんじゃないの。若武くんたちがどんな約束してたって、関係無いじゃない。私たちがするべきことは、砂原くんにお礼を言うことよ』
「あの時は、こっちがとつぜんコンタクトして、砂原にいろいろ教えてもらっただろ。お礼を言うとなれば、うちまで行った方がていねいだし、本人がそう言ってるんなら、よけいその方がいいよ。行こうよ」
黒木くんも、上杉をなだめるようなほほえみを投げた。
「砂原のおかげで、ずいぶん助かったんだからさ。ま、どんな密約があろうと、あきらめて行くんだな。わかったかい、上杉先生」
小塚くんもその言葉にうなずく。
上杉はいやな顔をしていたけれど、若武くん、黒木くんと小塚くんに私と、4票がそろってしまったということは、よくわかったようだった。
それで、しかたなさそうに腰をおろし、テーブルの上に腕を置いて全員を見まわした。
「わかったよ。ただしオレは、何もしゃべらないからな。礼をひと言言うだけだ。それでよければ、行く」
みんなが仕方なさそうな顔で、上杉の主張を認めた。
「それにしても、砂原の家って、今どこなの。砂原ミートは、もう取りこわされちゃっただろ」
小塚くんの言葉通り、工場の跡地は今は空き地になっている。
「もちろん新住所を聞いてあるさ。リーダーをなめんなよ」
若武くんが言った。
「今は、里親の家に引きとられてるんだって。父親が公判中で拘置所にいて、あいつのめんどうをみる大人がいないから、警察と児童相談所と民生委員が話し合って、あずけ先が決まったらしい。それが、すっごくいいうちで、今、最高に幸せなんだってさ」
それならよかった。
しかし若武くんは、ムズムズと口を動かし、ギュッと目をつむったかと思うと、もうがまんできないといったようにブルッと背筋を震わせた。
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mio - 返信ありがとうございます!あまり無理をしないでガンバってください!! (2020年3月16日 14時) (レス) id: 2668335830 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - mioさん» コメントありがとうございます!更新はもうしばしお待ちください。お話は出来てるのですが、打つのが中々…。それでも、皆さんに少しでも早くお届けするため、がんばっております。これからもよろしくお願いします! (2020年3月14日 14時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
mio - 更新頑張ってください!応援しています!! (2020年3月14日 14時) (レス) id: 2668335830 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 忍大好きマンNさん» コメントありがとうございます!皆様の応援を糧に、精一杯がんばっていきます。これからも読んでいってください。 (2020年3月11日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ももりんごさん» コメントありがとうございます!返信遅くなり申し訳ありません。そこまで言っていただき、本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いしますね♪ (2020年3月11日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年2月21日 13時