360話 ページ14
あたりはもうすっかり暗くなっていて、電灯で照らされた廊下には、私たちの長い影が映っていた。
「ここが塔の出入り口のドアだ。黒木、頼む」
若武くんが言い、万能キーオープンを出した黒木くんがそのドアの前に片膝をついて鍵穴に向き合った。
それから、ものの3分。
「開いた」
よかった。
私たちは、音がしないようにハイタッチをしてから、そのドアの中に踏みこんだ。
中は、ほんの少しの空間があって、そのむこうは螺旋階段だった。
狭くて、きついカーブを描いた階段が、上へと続いている。
「行くぞ」
先に立った若武くんの後ろに立花さん、そのあとに小塚くん、黒木くん、最後に私の順番だった。
階段は、クルクルと曲がりながら、上へ上へとのぼっている。
塔の上の気配に警戒しながら、それをあがる。
途中まで来た時、その気配が動き出した。
『上から、誰か降りてくるわ。戻って!』
みんなに静かに叫んで、私は塔の壁にある窓のへりをつかみ、ぶら下がるようにして窓の外に身を出す。
その時、とっさにケガをしている手を使ってしまい、傷が開いてしまったようだ。
みんなが戻っていく中、その気配はだんだんと降りてくる。
私のいる窓を通りすぎたところで中に戻り、塔の上から降りてきた、見たことない男の背後を気づかれないように歩く。
もし、みんなにおそいかかるようなら、階段の上から蹴りこんでやる。
男は、みんなに気づかずに階段をおりると、ジャンを名のるヤツの部屋の方に歩いていった。
「まいったな。誰だよ、あれ」
若武くんが、片手で両目をおおいながら言った。
「塔にいたのは、あいつなのか。想定外もいいとこじゃん」
いや、おそらくあの男こそが…。
「とりあえず、あの人物に名前をつけようよ。正体不明だから、ミスターX。あ、ここはフランスだからムッシュXの方がいいかも」
若武くんは、信じられないといったように立花さんを見た。
「こんな時に、名前を決めてるなんて、どーゆー神経だ」
…何とも言えないわね。
「じゃミシアは、どこに行ったんだ」
黒木くんが言った。
「本当に滝に落ちて、そのままなのか」
若武くんが、心のダメージをふり捨てるように背すじを伸ばした。
「よし、あいつがいた部屋を確かめよう。何かわかるかもしれない」
それで私たちは、また塔の階段をのぼったのだった。
ムッシュXが戻ってくるかもしれなかったから、大急ぎで。
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mio - 返信ありがとうございます!あまり無理をしないでガンバってください!! (2020年3月16日 14時) (レス) id: 2668335830 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - mioさん» コメントありがとうございます!更新はもうしばしお待ちください。お話は出来てるのですが、打つのが中々…。それでも、皆さんに少しでも早くお届けするため、がんばっております。これからもよろしくお願いします! (2020年3月14日 14時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
mio - 更新頑張ってください!応援しています!! (2020年3月14日 14時) (レス) id: 2668335830 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 忍大好きマンNさん» コメントありがとうございます!皆様の応援を糧に、精一杯がんばっていきます。これからも読んでいってください。 (2020年3月11日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - ももりんごさん» コメントありがとうございます!返信遅くなり申し訳ありません。そこまで言っていただき、本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いしますね♪ (2020年3月11日 11時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2020年2月21日 13時